表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

勇者の親友の苦難

作者: カムネラ



俺の幼馴染み件親友のライカが勇者に選ばれた。

確かにこいつは剣の才能もあり、なおかつ魔法もつかえてそのくせイケメンのタラシだったので、大物になるなとは思っていたのだが、まさか勇者とは。

それに比べて俺、ナルカドは剣の才能はまあまあだけど魔法は初級魔法しか使えなかった。

勇者であるライカが旅に出かけてから、何とか奴に並ぼうと頑張って騎士になることは出来たが、王宮直属である騎士になるには程遠かった。

現実なんてこんなもんである。



まあ、そんなわけで、半年という短い月日で勇者である奴は魔王を倒して帰って来た。沢山のお土産と美少女達をつれて。

沢山のお土産は、俺が勇者の旅に出掛けるライカに、どうせ旅に行くんだったら帰りにお土産よろしくー。と半ば冗談で言っていたのを覚えていたらしい。

こういうところがモテる要因の一つなんだろう。

ライカは老若男女訪わず優しく、人助けが趣味なので、自分から問題事に入っていき、解決する頃には何故か可愛い女の子をつれているという、天然のタラシ野郎だから、周りにいる美少女達がいるのは当然だと思った。


「ナルー!!久し振りー!突然だけど俺、女になったわー。」

「まてまてまて。」


しかしライカが女になっていたのは予想すらしていなかった。

首上までしかなかった髪は腰にまで伸びており、俺より高かった身長は俺の首あたりまで縮んでしまっている。

声も完全に女の声になってしまっていて、俺がライカだと見分けられる要素が容姿のみだった。

髪と目は勿論だが、何となく雰囲気似ているな。

という感じで全く信憑性は無いのだが、周りにいる美少女達がライカ様とか言うもんだし、ライカの美少女ホイホイは幼い頃から嫌というほど知っていたので、ライカだと納得する他なかった。

そんな結構な高さのお土産タワーを机の上に置いたライカは、何でもないかのように、お土産の説明をし始めている。


「女ってお前、何で女になったのか説明しろよ!」

「いやー、最後の魔王との闘いで呪いかけられてさ、女になった。あ、これ上手いんだよ。ゴマサブレ。」

「意味分からん!」

「魔王が倒しちゃったから本当のところは分かんないけど、女になった事で色々戦い方に支障がでてきたから、それ目当てで呪いかけたんだと思うんだけど…あ、やべこの饅頭賞味期限今日までじゃん、食べようぜナル。」


ビリビリと包装紙を破って、饅頭を口に入れたライカにため息を吐きたくなる。何でこんなに危機感がないんだこいつは。

男から女になるって…俺だったら発狂してる。


「呪いって解けんの?」

「解けます!」


ライカに質問をしたつもりが、ライカの後ろにいた白銀の髪の美少女が答えた。

全体的に白い服装からして、聖職者の人だろうか、聖職者の人は呪いとかに詳しいだろうし、ライカの仲間からしてかなりの実力者であろう彼女が言うことは、本当なのだろう。周りの美少女達もうんうんと頷いている。

じゃあ早くとけよと視線をライカに向けると、ライカは輝かんばかりの笑顔で衝撃的な言葉を吐いた。


「俺、戻る気ないんだよね。」


あっけらかんというライカとは違い、周りの美少女達は失神しそうな勢いである。というか、白銀聖職者(仮)は失神した。

俺も無意識に貰った饅頭をライカに殴り付けるほど混乱していたが、ライカは笑顔のまま俺が投げた饅頭を口でキャッチした。思わずお見事といいそうになるが、そんな雰囲気ではない。


「何でだよ!」

「そうだよライカ!ナルカドをびっくりさせたいからもう少しだけって言ってたじゃないか!」

「…今すぐ…戻る…絶対…」


ナイスバディの美少女と深くフードを被った女の子(ライカの仲間なので確実に美少女)が、饅頭をさらに食べようとしているライカの両腕に抱きついた。

ナイスバディの美少女の胸がライカの腕に当たっているのが実ににうらやまし…はっ!なに考えてるんだ俺。

そんな煩悩と戦っている俺を他所に、美少女に挟まれているライカは、不思議そうに両腕にしがみついている二人を見ている。


「何でそんな呪い解きたいんだ?別に女になっただけだろ?」

「問題ありまくりだろ!!色々!!」


絶句している美少女二人の変わりに突っ込んだ俺に、ライカは少し考えた後、問題の答が分かった!とばかりに笑う。子供かお前は。


「大丈夫だ!女になったって、魔王は倒せたから!」

「そういう意味じゃない。」

「じゃあ何なの?」


そういうライカの真っ直ぐな問いに、両腕を掴んでいる美少女二人がたじろぐ。

ライカは何もいう気がない俺に気づいたのか、視線を離して直ぐ隣にいるナイスバディの美少女に視線を合わせた。

ナイスバディの美少女はライカの視線が合うとみるみる顔を赤くし、口を閉じたり開いたりしている事から、自分の恋心をライカに告げるか迷っているようだ。

この感じだと他の美少女もライカに告白してないんじゃないか?あり得そうで怖い。

もうこの際美少女達にはライカにはっきり好きと言ってやってほしい。こんなハーレムを饅頭食いながら見なきゃいけない俺の為に。


「あー、じゃああれ?お姫さまとの婚姻の事?」

「ゲゴッ!?」


ライカの発言にぴしりと固まった二人を余所に、俺はライカから発せられた衝撃的な事実に、口に入れた饅頭を飲み込めずにむせた。

この国の姫様が勇者と結婚するとか聞いてねえ、身分違いにもほどが…いや、魔王を倒した勇者なんだったコイツ。

もしかして、魔王を倒した褒美に姫様との婚姻っていう感じかこれ。流石ライカ、美味しいとこかっさらってく。


「だからしないって!俺お姫様と数回しか会ったことないし、いくらなんでもこれじゃあ俺と結婚するお姫様が可哀想じゃん。」

「あー、うん。そうか。」


美少女二人がライカに隠れてガッツポーズをしているのを見ながら適当に応える。

多分俺の幼馴染みの勘だとお姫様、ライカの事好きだと思うぞ。


「でも姫様との婚姻って断れんの?」

「断れないよ。勇者でも。」

「駄目じゃん!お前よく言いきれたな!」

「でもさ、ナルカド。この姿だったら大丈夫だと思わない?」


女同士は婚姻出来ないだろー?とあっけらかんと言ったライカにガックリと肩を下げる。ライカが何で女のままがいいのかは分かったが、いいのかライカ。

…いや人の為には自分を犠牲にしても構わない奴だ。あらかた無理矢理自分と結婚させられる姫様を救うためなんだろうが、姫様からしてみれば思ってもみない幸運だったはず。

流石に可哀想になったので、鈍感すぎるライカを好きになった姫様とその他ライカの虜になった美少女達にドンマイと念を送っておいた。

お前らが好きになった奴はこんな奴である。


「解くことが出来るのは魔王を倒した俺だけだし、いけると思うんだけどなぁ。」

「でもお前女になっても婚姻話やって来ると思うぞ。」


無性にムカつくが、女になったライカはイケメンから美少女に様変わりしている為、元男だとしても得意の美少女ホイホイならぬイケメンホイホイをやらかす気がしている俺は、これ幸いとライカを男に戻れと提案する。

美少女がライカの周りにいるのと、イケメンがライカの周りにいるのとどっちが俺の為になるかと云えば明らかに前者であるからだ。

誰が好き好んで野郎(勇者)と野郎の恋愛を見なきゃいけないんだ。絶対今以上にめんどくさくなること、間違いなしである。


「あー、じゃあこうしよう!俺は好きな人と相思相愛だから婚姻出来ませんってことに。」

「だ、誰と!?」


ライカの相思相愛発言にナイスバディの美少女が驚き、何処か期待した目でライカを見て言った。フードを被った美少女もライカの相思相愛相手が気になるのか、ライカの服をぎゅっと掴む。

そんな二人を他所に俺は隠そうともせずにガッツポーズをした。二人の視線が痛いが、そんなん知るか。

ライカと幼馴染みの関係を続けて早13年…ついにこの日が来た。恋愛より剣をとる野郎が仮とはいえやっと一人の女に目を向けたのだ。

そこにいるナイスバディな美少女でもフードを被った美少女でも気絶している白銀の美少女でも、はたまたライカが無意識にたらしこんできた美少女の中の誰でも良かった俺は、これで俺の苦労が格段に減る事に安心していた。


「決まってるさ。な、ナルカド。」

「……え?」


笑顔でライカの言葉を待った俺に言ったライカの言葉に、何故か非常に嫌な予感がひしひしと感じている俺は、思わず口元がひくりと上がっていた。

ライカはそんな俺の状態を気づいていないのか、そりゃあもう名案を思い付いたとばかりに誰もが振り返る程の笑顔で最大級の爆弾を俺と美少女二人に言った。


「ということでナルカド!俺と駆け落ちしよう!」


そう俺に、手をさし出したライカに俺は頭を抱え、美少女二人は失神した。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 期待してます
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ