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5.奴隷奪還

 リオンは王家によって、ずっと地下神殿に閉じ込められていた。


 青い空も小鳥の声も知らず、陽の光さえ浴びたことが無かった俺の弟。

 哀れだと思った。


 でもそれは、この魔獣ヴァティールも同じ。


 国の英雄、大魔道士アースラが表で活躍していた裏で、こいつは酷い目に遭って生きてきた。

 魔縛に縛られ、絶大なる魔力のほぼ全てを結界維持のために吸い上げられ、生きた燃料として何百年もの間、虜とされてきたのだ。


「あの……ヴァティール……」


 おそるおそる声をかけると、魔獣は驚いたように振り返り、慌てて涙をぬぐった。


「……な、何だ! 人間!! 邪悪なものの末裔め。こっそり覗き見とは趣味が悪いな」


 もうすっかりいつもの調子のヴァティールに戻っていたが、その姿は少し弱々しく見えた。


「……えっと……すまない。俺なんかにつき合わせてしまって……」


 そう言って深々と頭を下げると、魔獣は大きな瞳を更に大きくして瞬いた。


「正気か、人間?

 契約で縛ってる相手に頭を下げるなぞ、聞いたことが無いぞ?」


「でも悪いのは俺の方なんだから、しょうがない。すまなかった。

 俺は捕まっている民を逃がしたいから、お前の協力はどうしても欲しい。

 でも、その後は自由だ。

 契約は、何とかして解除する。そのあとには、俺の体もお前にやる。

 だから、リオンのことだけは許してやってほしい。

 あの子も民たちと同じ、俺の被害者なんだ」


 深々と頭を下げたまま、ヴァティールに頼んだ。


「ふーん、被害者、ね。

 ワタシには到底そうは思えないが。

 ま、よかろう。

 まずは魔縛がなんとかならないと、ワタシは身動きが取れない。

 お前の心意気も、しかと受け取った。

 ……えっと人間、名前は何だったけ?」


「エルシド……エルと呼んでくれ」


「じゃあエル、そういう事なら協力してやる。何でも言えば良い。

 ……お前はやっぱりシヴァの方に似ているな。

 シヴァは結局鬼となったが、お前は奴とは違う道を進みそうな気がするよ」


 そう言って笑った魔獣の笑顔は、リオンのものとよく似ていた。

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