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3.奴隷奪還

 装備を整え、里を出発した俺たちは、エルシオンの民たちを救い出すために街道へと急いだ。


 俺は護身用の短剣しか持っていなかったので、死んだ敵兵が残した剣の中から良さそうな物を選んで腰につけている。


 それとは別に、数本の剣を用意して入念に手入れをしておいた。

 血まみれの剣は、そのままでは切れ味が悪く、使い物になりはしない。


 手入れをしながら『これで人を殺すのか』と気が重くなったが、手加減などしている余裕は無い。殺らなければ殺られるだけだ。


 もう、俺に逃げ道は無い。


 魔獣ヴァティールは、そのままリオンの魔剣エラジーを引きついだ。

 特に手入れをしているようには見えなかったが、魔剣というのは普通の剣とは大きく異なるらしい。


 そうこうするうちに、昼はとっくに過ぎた。

 森側から街道に近づき、まずは携帯食を食みながら少し休む。

 それからヴァティールと共に『ある作業』を済ます。


 あとは、民たちがここを通るのをただひたすら待つだけだ。


 ヴァティールは目だけでなく耳も人間のものより良いらしく、神経を集中させれば、半径20キロル以内の音を捉えることが出来るという。

 監視の役目は、この魔獣に任せれば大丈夫と判断した。


 しかし一行はまだ近辺には居ないようで、時々鳥や動物の声が聞こえるのみだ。


 青々とした木々は体や武器を隠すのにちょうど良いが、特にすることもなく待つ……というのも、これはこれで疲れるものだ。


「ちょっと行ってくる」


 魔獣ヴァティールが待ち疲れたのか、立ち上がった。


「ああ、じゃあ俺も」


 何気なくそう言って後に続こうとすると、魔獣は赤い瞳で俺を睨みつけた。


「何が悲しくて人間なんかと連れションしなければならないのだ。

 ついてくるな、しっしっ!!」


 まるで野良犬か何かを追い払うような仕草でうっとうしげに俺をあしらうと、ヴァティールはすたすたと森の奥に行ってしまった。


 俺はがっくりとうなだれた。

 あの上品で可憐な俺の弟が……。

 鈴の音のような声ではにかみながら喋る、天使のような弟が……。


 中身は別とわかっていても、あの顔で、あの声で言われると本当に落ち込む。


 今、リオンはあの体の中で眠り続けているという。

 目覚めるのは、いつの日なのだろう?

 早く目覚めて欲しい。

 あの日のことを心からわびて、そして思いっきり抱きしめてやるのだ。


 そんな事をぼんやりと考えている間に、随分と時が経ってしまった。

 ヴァティールはまだ戻ってこない。

 どうしたのだろう。


 まさか大の方なのか?

 いや、それにしても遅すぎる。

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