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再会小話4・リオンのトホホ外伝 5

「兄様はね、『じゃあ、昔の約束通り……俺と結婚する?』と僕にプロポーズして下さったのですっ!!」


 その言葉を受けて、エルがずいと進み出る。


「いや~。やっぱり運命って言うのかなぁ?

 俺とリオンは、どんな障害があっても共に歩み続ける運命だったんだよ。

 兄として見守っていこうと決心してたけど、運命なら仕方ないよな。あはは~!」


 仕方ないと言いつつ、やけに嬉しそうにエルが笑う。


 途中まではそれなりの兄だったようだが、愛しの弟に女をあてがうストレスは、毎日洗面器いっぱいの血を吐くほどのものだったろう。

 その反動で、想い叶った今は、以前を更に上回る強烈なアホになったのだろうか……?


「それに後になって気がついたけど、リオンって年の取り方が明らかにゆっくりなんだよな~。

 聞いてみたらクロスⅥやⅦ、代々の神官たちもそうだったみたいだし、いつまでも少女みたいでさ。

 だからそもそもリオンが普通の女性と付き合い続ける事は不可能だったんだ。

 容姿があんまり変わらないから、一箇所に5年以上住むことも出来ないし」


「ええ、でも僕は兄様さえ一緒に居てくだされば、どこに住んでも幸せです。

 女の子達に振られたときも、よく考えたらちっとも悲しくなかったし、兄様と一緒が一番ですっ!!」


 その後奴らは2時間も部屋に居座った挙句、ラブラブと帰っていった。


 え~っと。やつ等の用事は何だったっけ?


 確かワタシに『謝りたい』とか言ってなかったかァ?

 結局ノロケだけ聞かせて帰りやがって。


 そう思ってふと見ると、可愛らしくラッピングされた焼き菓子が、お詫びのメッセージとともに置かれていた。

 開けて食ってみると、舌がとろけそうな美味さだった。

 なるほど。

 カノジョたちの顔色も悪くなろうと言うものだ。女子力高過ぎにも程がある。


 でもリオンはきっと、相手に喜んで欲しくて一生懸命作ったのだろうなァ。


 そういえば、アリシアやエリスもよくワタシに手料理を作ってくれたものだった。

 かつての楽しい思い出がよみがえる。


 もし外に連れ出す事が出来ていたら、アッシャもあのようだったろうか?

 アリシアやエリス……そして、リオンのように笑い、料理を作ったりしたのだろうか?


 地下神殿の閉ざされた一室で、かくれんぼをしていた娘を思い出す。

 少ない家具の陰で、じっと隠れていた幼い娘を。


 しゃがんで、丸くなって、じっと目をつぶって……それで隠れているつもりだった可愛い娘を。

 

 ああ…………ワタシは娘さえ幸せであれば、他には何もいらなかったのに。


 アースラには、そんな気持ちはきっとわからない。

 ヤツは自分を慕う神官も、実の妹さえも実験に使っていた。


 親友と妹の間に出来た娘、アッシャのことだって。


 大切にすべき者たちを踏みつけてまで目指したものは、かりそめの平和。

 ワタシたちの種族からすれば、一夜の出来事のように感じられる、刹那の平穏。

 

 ……それでもふと、思う事がある。


 もしもあの時、アースラの願いを叶えてやったなら、何かが変わっていたのだろうか?

 すがるような、あの幼い瞳を思い出す事がある。


 ワタシには、人間の本当の苦労はわからない。


 生まれ持った力は強く、ワタシを害せる者はほとんどいない。


 老いもしないし、死にもしない。

 空を飛び、気ままに暮らす。


 アースラがワタシを捕らえたとて、時はワタシを殺さないが、アースラはそれに殺された。


 時間が無かったが故の暴走だったのかもしれない。

 アレはそれでも、ただの人間だったから。


 ――――――今、オマエが持ちたかったであろう能力をすべて備えたリオンが生き続けている。


 もしオマエがここにいたなら、問うてみたい。

 オマエの志を受け継ぎながらも自分の愛する人を大切にし、幸せをつかんだリオンに、オマエは何と声をかけるのか。


 その幸せを喜ぶのか、『私欲に走った』と貶めるのか。


 オマエがその問いに答えてくれるまで、ワタシはまだオマエという名の檻に囚われたままなのかもしれない。



 Fin


 






今回もありがとうございました!!

次回のお知らせはまた活動報告で。


外伝もずいぶん長く書きましたが、次の外伝で最終回予定です。

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