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7.外の世界

 ここに来て数日がたった。


 王宮にいた頃とは全く違う暮らしに戸惑うことは多かったけど、それでも慣れればどうと言うことはない。


 最初、料理は近くの山里まで出かけて行って買っていた。

 歩いて1時間以上かかるけど、作れないのだからしょうがない。

 

 でも、そのうち料理店のおばさんと仲良くなり、料理の方法も教わって不自由することは無くなった。

 

「はい、リオン、あ~んして?」


「美味しいっ! 兄様の料理はいつもとっても美味しいですっ!」


 リオンが、ほっぺを押さえるようにして言う。


 ああ可愛い!!

 料理を覚えて本当に良かった!!


 リオンは掃除は上手かった。けれど、料理は下手だった。

 なので、料理は主に俺が作っている。


 リオンは今まで誰かが『料理』をしているところは、1回も見たことが無いらしい。

 調味料の存在さえも知らなかったリオンに、いきなり料理が出来るわけがない。


 でも俺は、厨房のおばさんに可愛がられていたので、少しはイメージがわく。

 ちょっとした手伝いならやらせてもらったこともあるし、簡単な料理なら、すぐに出来るようになった。


 今のところ、リオンの役目は、単純な野菜切り作業や味見係だ。


 最初、弟に野菜切り係をお願いしたときは、ビックリした。

 弟は、地下神殿から持ち出してきていたらしい、あの魔剣で野菜を切ろうとしたのだ。


 エラジーという名のあの魔剣は、未使用持にはとても小さくなる。

 なので、俺はリオンがそんなものを持ち出していたことにすら、気がついていなかった。


 慌てて止めて、普通の包丁の使い方を教えると、間もなく上手にできるようになった。


 リオンが一生懸命野菜を切っている姿は、とても可愛い。

 新緑色のエプロンをつけて、リズム良く野菜を刻むと、淡い金の髪が柔らかに揺れる。俺はそのさまに、思わず見とれてしまう。


 噂に聞く『庶民の新妻』ってきっとこういうのだろうな~~。

 カワイイな~~。


 ……ハッ!


 いけない、いけない。

 またオカシナ妄想をするところだった。いい加減にしろ、俺っ!!


 しかし俺の弟は、本当にかわゆいのだ。

 野菜を切っている姿も可愛いけど、味見している姿は、更にかわゆくて悩ましい。


 俺が差し出すスプーンに小さな唇を寄せ、鈴の音のような透き通る声で、


「美味しいです。兄様」


 と、本当に嬉しそうに微笑む、弟の姿。


 ああ、『生きてて良かった』と神に感謝するレベルである。


 教育係エドワードの、


「どこの新婚さんですか?」


 という、冷たい空耳がまた聞こえてきたような気がしたけれど、可愛いんだからしょうがないだろうっ!!

 

 可愛過ぎる弟の喜ぶ顔が見たくて、俺の料理の腕は、どんどん上達していった。





 




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