表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
436/451

再会小話3 そうだ、バイトをしよう 8

 トランプは中々楽しかった。


 ワタシが勝ったら逆ギレして封印しようとするのではないかと最初は戦々恐々だったが、そんなこともなく普通に過ごせた。


 そろそろ夜明けが近づいてきて、エルの方は半分ウトウトしている。

 体力はあるヤツだが、同じ失敗(ワタシとアリシアを混同して痛い目に合う)を繰り返すまいと頑張ってはいたし、気力の方が尽てきたのだろう。


 リオンはまだまだ元気いっぱいで『いつもは兄様と二人でするのですけど、3人でする方が楽しいですね♪」と始終ニコニコ顔だった。

 

 毎回迷惑ばかりかけられるけど、ニコニコ無邪気に笑っている時のリオンはけっこう可愛いんだよなァ。


 アレ?

 リオンって、笑うとアッシャに似てなくないか?


 ふとした表情の中に『我が娘』の面影が垣間見える。


 そうだ。エリスよりもアリシアよりも、リオンが一番『アッシャ』に似ている。

 遠いとは言え同じ血を引いているのだから、そういうこともあるのだろう。


 リオンがアレス兵たちに殺されたとき、道理を曲げてまで十数万の兵たちを焼き溶かしてしまったのは、奴の中に無意識に『アッシャの面影』を見てしまったからなのかもしれない。


 我が娘はあの後どうなったのだろう。

 アースラにひどい目に合わされていなければ良いが……。

 思わず涙がにじむ。


「ど、どうしたのですかっ……?」


 リオンが慌てたように覗き込む。


「……実はなァ。ワタシにはかつて『アッシャ』という娘がいたのだが、アースラに取り上げられて消息不明なのだ。

 その娘がオマエに少し似ていて……」


 ワタシはどうしてこんな話をリオンにしているのだろう。

 奴は『アースラの人器』なのに。


 リオンはしばらくの間黙って聞いていたが、


「アースラ様にもきっと、ご事情がお有りだったのだと思います。

 それでも……本当に申し訳ありませんでした。

 アースラ様の代わりに僕がお詫びさせて頂きます」


 と言い、椅子から立ち上がって深々と頭を下げた。


 ああ……コイツはアースラの人器ではあるが、アースラではない。

 別の人格を持ち、別の考えを持つひとりの人間なのだ。


 混同してはいけない。


 そうして顔を上げた時の悲しげな表情が、益々わが娘に似ていた。

 

「アッシャ……!!」


 ついうっかりアッシャに似たリオンを抱きしめると、エルが鬼の形相でワタシを見ていた。

 オマエ、さっきまで寝こけていたじゃないかッ!?


「俺のリオンに何をするッ!!」


 ワタシはエルに部屋から追い出された。

 リオンはワタシをかばおうとしていたようだが、頭に血の上ったバカ男には全く聞こえていない。


 う~む。リオンとは完全に和解できたが、やっぱり今回もろくなことにならなかった。

 やはり奴らには近づかないに限る。



 部屋に戻ったワタシは、荷物を持ってホテルから直ちに転進した。


 自分のことを棚に上げて怒るエルは真性のアホだが、追い出された身だからありがたく出て行ってやろう。

 これ以上奴らに振り回されていたら、期限内に本体を探し出すことが出来なくなってしまう。


 ま……エルのあの剣幕なら、当分はワタシの近くには寄って来ないだろう。


 うん。来ないといいな。


 どうか来ませんように……。


 大いなる希望と一抹の不安を抱えてワタシは豪華なホテルを後にした。



                        Fin

 

読んで下さった皆様、ありがとうございます❤

一応リオンは『滅びの呪文』は使うつもりはありませんでした。気分を落ち着けるために、途中まで唱えてみただけです。

普段は魔術は使いませんが、以前魔術の修業をさぼった時、コントロールが効かなくて困った経験があるので(http://ncode.syosetu.com/n1569bv/259/のあたり)ある程度はコントロール能力を磨く目的で修行しています。


ブルボア王が支配人をとっちめたのは、魔獣が暴れる以前に、王家の商売の信用度が落ちるようなやり方を彼がしていたからです。

商売は信用第一!!(だけど王は悪徳業者には容赦なし。姑息に騙して身ぐるみはいでポイ捨てしたりはしてますけどね)


ではまた次の外伝で♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ