再会小話3 そうだ、バイトをしよう 2
紳士が乗っていた馬車に招かれる。
その中でよく話を聞いてみると、高給にはそれなりの理由があった。
ワタシの容姿が二代目ブルボア国王の母であり、奴隷解放運動の指導者として名高い『アリシア様』の若い頃の肖像画とソックリなので、イベントで『そっくりさん』として使いたいのだそうだ。
まあ、本人なのでソックリなのは当たり前なのだが。
ふむ……どうしたものか。
しばし考える。
まァ、良いだろう。
相手はワタシを『本人』だと思っているわけではないから、政治的に利用されることもない。
人間のお遊びにちょこっと付き合うだけで、時給680YEENならひと月は働かねばならない金額が一日で手に入る。
悪い話ではない。
ワタシは我が娘アリシアに感謝しながら頷いた。
そして連れてこられたのがココ。
イベントというのはカップル向けの模擬結婚式で、モデルとして結婚式をするだけで良いと言うのだ。
もらった名刺には『サムシングブルー・カンパニー』とあった。
ワタシは結婚式場になど興味はないのでちっとも知らなかったが、世界を股にかけて式場を展開している大規模企業なのだという。
ただ、詳しく説明を聞くと納得できない部分もあった。
なぜワタシが見も知らぬ男と愛を誓ったり、キスをせねばならんのだ。気持ち悪い。
たとえ『形式的』なものであったとしても、『可愛い我が娘の体』でそんなことは出来ない。
もちろん、ワタシ自身も絶対拒否する。
断固として断ったら、相手は引き止めにかかってきた。
結局、報酬は50%ほど下がったが『会場の華としてアリシア様の姿で接客を』と言われ、そちらを正式な契約として引き受けることにした。
新・業務内容は主にお茶くみだ。
これならできる。
伊達に人間生活が長かったわけではない。




