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再会小話3 そうだ、バイトをしよう 1

「では、ヴァティールさん、こちらでお着替え下さい」


 案内された場所は、豪華絢爛な建物の一室だった。

 なんでもお金持ち専用の結婚式場なのだとか。


 使っている建材から内装まで、見事としか言い様がない。


 初老の執事風従業員が案内する部屋にはメイドが四人も控えており、ワタシに丁寧にドレスを着付けていった。


 終わったあと鏡を覗いてみたが、流石わが娘アリシアの体。

 豪華なドレスに負けることもなく着こなしていて、極上に美しい。

 

 え? こんなところで何をしてるのかだって?

 バイトだ! バイトッ!!


 エルたちのところから転進してから、3ヶ月程が経った。

 あいつらが近くにいないと、本当に毎日が平和である。


 喜んでいたのも束の間、手持ちの資金が尽きた。

 

『本体』のままなら岩を黄金に変えることも容易だったが、今は『アリシア』の体。

 強い魔法など使ったら、たちどころに体を傷めてしまう。


 それでもワタシは『低位の魔法』なら使うことができた。

 小粒ではあるが人間の好む宝石を造れるので、暮らしに困ることはないはずだったのだ。


 しかし、


『魔力を使えばリオンに探知される』


 ……ということが奴らとの2回の接触でわかったので、ワタシは自分の魔力が外にもれないよう、一切を封じた。


 幸いアリシアの体は筋力が強い。

 体力もある上に、反射速度も上々だ。


 オカシナ男に付きまとわれても天誅を加える事は出来るのだが、お金がないと『人間としての生活』が維持できない。


 そこで、うらぶれた飯屋の外壁に貼ってある『時給680YEEN』の従業員募集チラシをぼ~っと眺めていたら、馬車に乗った、身なりの良い紳士に声をかけられた。


 なんでも、ワタシを高給で雇いたいのだとか。

 美人は本当に得だなっ♪




挿絵(By みてみん)

ちなみに胸の焼印はヴァティールが宿った時点で消えています。

ただ、本体が見つかれば元の状態に戻して返すことにしています。

傷も、経てきた年も、全てがアリシアの生きてきた証と理解しているので。


アリシアの体の修復は、魔力でというより自己修復機能によるものなので探知はされないようです。

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