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そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)12完結

 それでも、引きつったのは瞬きほどの間であった。


 エルはリオンの頬に、にっこりと微笑みながら美しくキスをした。


 さぁどうだ?

 これでリオンの機嫌は直るのかッ!?

 ドキドキしながら見守る。


 なんせ今夜、アースラの末であるリオンに居座られるかどうかの瀬戸際なのだ。

 頑張れ、エル!! ワタシのためにも頑張って仲直りしてくれッ!!

 心から応援してやるぞッ!! 


「………………兄様!

 やきもち焼いちゃってごめんなさいっ!!」


 リオンは可愛らしく兄の胸に飛び込んだ。


 ほっ。


 これで仲直り完了か。案外ちょろいなァ。心配してソンした。

 権謀術数に長けていたアースラの末とはとても思えない。


 そうして二人は、仲良く自分たちの部屋に帰って行った。

 

 万歳! 万歳!!

 これでゆっくり眠れる。


 ワタシは基本睡眠を必要としないが、人間の体を使っている間は一定時間体を休眠させて傷んだ部分を修復せねばならない。


 悪いがよその夫婦喧嘩より、我が娘の体の修復作業の方が大事に決まっている。



 翌日は素晴らしい快晴だった。


 ロビーの大きな窓から朝日が差し込む早朝、ワタシは早速退室の手続きを取っていた。

 本当はあと二泊するつもりだったのだが、あの二人の部屋の隣だといろいろと鬱陶しい。

 しかも諸事情で結局体を休眠させられなかったのだ。


 あいつらは、あれだけ遊んだり喧嘩したのにさっさと寝もせずに、明け方までやかましかった。

 人間の子供の修学旅行じゃあるまいし、イイ年なのだからもう少し落ち着けよッ!!


 ワタシは耳がいいので、隣の部屋であっても全て聞こえてしまう。


 部屋に帰ってからのエルの土下座などは「もっとやれ~! いい気味だ~ッ!!」と、比較的ワクワク聞いていたのだが、その後は出会ってからの思い出話を強烈なのろけを交えながら延々と語る。


 そう、明け方まで延々と。


 人間のじじいは話が長いと魔界の本にも書いてあったが、本当に長い。

 よみがえるのは、廟で延々とじじいの長話を聞かされ続けたあの拷問のような時間。


 繰り返し、繰り返し、何百回、何千回。それは21年間も欠かさず続けられたのだった。


 昨晩が『エルシオン出会い編』だったから、今晩は多分『旅の苦労編』だろう。

 その次は『ブルボア王国編』だろうか……。


 軽々と明日、明後日の話題を予想出来てしまう我が身が悲しい。


 あいつらは無駄に頑丈なうえ、レジャーでテンションが上がっているから数晩の徹夜ぐらいはへっちゃらだろう。

 そしてリオンはあんな話でも付き合っていて楽しいようだ。


 もちろん、あいつらが起きていようと、意識をシャットアウトして聞こえないようにし、ワタシだけはぐっすり眠るという事は出来る。


 でも、自分を封印できる『アースラの末』が近くに居て起きているというのに、動向を探らず無防備な姿で眠るという選択はない。


 思い出話の中で、エルならうっかりアリシアとの愛を語るおそれがある。

 そうなったなら、また夫婦喧嘩が勃発するに違いない。


 ワタシが眠ったあと知らぬうちに夫婦喧嘩に巻き込まれ、八つ当たりで封印されたりしたらマヌケ過ぎるじゃないか。


 もう、過去の過ちを繰り返すわけにはいかないのだ。


 幸い昨夜は大丈夫だったが、今日もあの二人はエルシオンランドで遊ぶ予定だと聞いている。

 昨日同様、リオンに捕まって一緒に引っぱり回されることだろう。


 そしてアホの子のエルは、きっと今日も何かやらかして、ワタシが巻き込まれるのに決まってる。


 こんなウザいことが、この世にあるだろうかッ……!!


「あばよっ!」


 ワタシはもう当分、エルシオン城には近づかない。

 二人に会うことは無いだろう。


 無いといいな……。


 どうかありませんように……。



 大いなる希望と一抹の不安を抱えてワタシはエルシオンを後にした。



FIN




 後書き


 前回の再開編を書くのがあまりにも楽しかったので続きを書いてしまいました。


 エルは能天気に過ごし、リオンも師匠が美しく飾られ、皆に感謝される姿を見てそれで満足なようです。

 図太い二人はもはや人外寄りな気がしてなりません。


 ではまた~!

 読んでくださって大感謝です!!!

 次の外伝開始は、また活動報告で❤



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