そうだ、エルシオンランドに行こう!(再会編2)5
しかし人間とは不思議な生き物だ。
ゆかりもない同属の遺体を飾って大勢で眺めて、おまけに金まで払って……その感性は魔族であるワタシには到底理解できない。本当に不可解な生き物だ。
何?
オマエもちゃっかりお金を払って見に来ているじゃないかだと?
ワタシのは調査!
調査だと最初から言っているではないか。
だいたい、ここの料金だって無料券で入ったから、びた一文払ってないし。
それでも氷の棺に納められているクロスⅦは、微笑んでいるかのように見えた。
生まれて初めて人間どもにちやほやされて、喜んでいるのかもしれない。
それとも、弟子が幸せそうであるのを知って嬉しいのだろうか?
いや、ここにあるのはただの物言わぬ遺体。
そんな感情があるわけも無いのに……ワタシも人間に毒されてきたのかもなァ。
思うところはあったがせっかくなので、エルたちと共に城内を回ることにした。
そうすると、時々貴族風に着飾った人々とすれ違う。
そのうちの一人を目で追っているとエルが言った。
「記念撮影だけだと儲けが少ないので、今年から衣装の貸し出しも始めたそうだ。
昔は衣装一着用意するにもお金がかかったので記念撮影が精いっぱいだったけど、今はブルボア王国・第二王子直営の工房から宣伝と引き換えにタダ同然で仕入れられるようになったって話だったな。
それに、第三王子がエルシオン・レジャーコーポレーションの特別顧問を務めているのだが、初代の王を思わせる中々のやり手らしい」
「ふーん」
あんな奴が今の時代にもいるのかァ。
アルフレッド王も「客単価! 客単価!」とうるさかったが、今度の奴も相当だな。
城内には銀行や両替商も上手く配置されており、客から絞り上げる気満々なのが窺える。
次にワタシはエルと共に地下の牢獄跡に行った。
昔は拷問の道具などもそろっている陰鬱な場所であったが、今ではノリのいい兄ちゃんが「良い旅を~♪」と手を振ってくれる地下ダンジョンとなっている。