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再会小話(前回外伝の数年後のお話)8

 翌朝、本体探しの旅に出ようとすると、エルは小さな紙の束を餞別にと寄越した。


 見てみると、エルシオン城の無料入場チケットだった。

 直営ホテルの無料券に、お食事券・お土産引き換え券まである。


 なんでもブルボア王国はエルシオン・レジャーコーポレーションの大株主で、毎年王宛てに大量の株主優待券が送られて来るのだそうだ。


 その大半は兵士や国民の福利厚生に使われるのだが……エルとリオンの事情は、エルの子孫でもある代々のブルボア王にだけは引き継がれており、王経由でいくらか横流しされてくるらしい。


「……そうだリオン、裏庭から花を摘んできてくれないか?

 せっかく見事に咲いているから、それもヴァティールにあげたいんだ。

 いいかな?」


 出発の直前にエルはそう言い、リオンはにっこりと頷いた。

 リオンが玄関戸棚からハサミを取り出すだけでちょっとドキリとするが、魔剣を懐から取り出すよりは良いだろう。


 リオンはそのまま可愛らしく駆けて行った。


 本当のことを言うと、旅に花など邪魔なだけだ。

 だが人の好意は基本受ける方針なので、しばしの間エルと共にリオンを待つことにする。


「ヴァティール、実は最後に頼みがあるのだが……」


 そして、またコイツは思わせぶりに言葉を切りやがった。


 今度は何だ?

 金を貸せとかか?

 

 絶対イヤだ。


 それとも他に何か…………。

 思いをめぐらすワタシにエルは言った。


「最後の思い出に……アリシアにキスをさせてくれっ!」


 ……は?


 一瞬空耳かと思ったが、確かに奴はそう言った。


 もうすっかり吹っ切れたと思っていたのに、アリシアの事をまだしつこく愛していたらしい。


 弟の方は目を見張るほどの成長があったというのに、コイツの方は相変わらずだなァ。

 まったく……。


 脳裏に21年間、一日も欠かさずにアリシアの下に通い続けたエルの切ない姿がよみがえった。

 

 不自由な足で杖をついて階段を降り、しわしわの手でアリシアの冷たい体をさすりながら、繰り返し、繰り返し、昔話を語っていたっけ……。


 でも残念だったな。

 ワタシは、そこまでは優しくない。


「お~い、リオン!! オマエの旦那がワタシにキスしたいそうだぞ?

 気持ちが悪いからシメておけ」


 それだけ言って、ワタシはすたこらさっさとその場を後にした。


 思い出なら散々作ったろう。

 108歳まで長々と生きやがって。


 エルがその後どうなったかは定かではない。

 


 Fin





 今回のは前回の4年後の話でした。

 二人はこのように幸せに暮らしていますよ~!←ヴァティールが現れる前までは。


 エルは別に浮気しようと思ったわけではありません。(中身はアレだし)

 でも、死別した元妻の若き日の姿を目の前にして、懐かしかったのでしょうね……。

 思い出を求めたことの代償は高くついた事でしょうが。


 さてリオンは「もう兄様ってば~、駄・目・だ・zo ☆」ぐらいで許したのか、それともエルを解体して花の代わりに花瓶に生けたのか……それば読者の想像にお任せいたします。(どんな想像をしたかでその人の性格がわかるなぁ……ちなみに正解はありません。個々の想像が正解です)


エルはエルシオン城にもけっこう平気で来てますが、これぐらい図太くないと永遠の命ではつらいことでしょう。

本人的にはいつでも故郷の城に行って隅々まで回れるので中々満足なようです。


他の国が統治していた頃よりもお金かけて管理してる分キレイですし、王と利害が一致したため地下以外はエルシオン王国時代と同じ内装に戻してあります。


母である王妃の肖像画も絶世の美女として飾られているし妹や父王も同じです。本人の肖像画だけはなく、失踪した王子として地味に扱われています。


リオンが女の子と付き合った時の話は、数回後の外伝で思い出話として語られます。

ではまた割烹にて次の外伝のお知らせを致します❤






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