再会小話(前回外伝の数年後のお話)7
エルがケーキを食べるさまを、固唾を呑んで見守る。
でも、特に変化は起こらなかった。
毒は入っていなかったらしい。
「それで、あのですね、ヴァティールさん……」
リオンが言いよどむ。
うっ!!
続きは何だッ?
この兄弟は何故、こういう肝心なところで言葉を切ってワタシを悩ませるのだ。
まさか、
『あのですね、ヴァティールさん……やっぱり死んで下さい。』
とか、
『あのですね、ヴァティールさん……善の結界を張り直したいので贄になって下さい』
とかではあるまいなッ!?
アースラによく似ているコイツなら、にっこり笑顔でそれぐらいの事は吐きそうだ。
でも、その予想は外れた。
「あのね、ヴァティールさん…………アースラ様や僕らクロス神官があなたに多大なご迷惑をかけた事、……本当に申し訳ありませんでしたっ!」
リオンは可愛らしく頭を下げた。それも深々と。
「僕、ずっとあなたに謝りたくて……それであなたを探しながら機会を待っていたのです」
「そ、そうなのか……?」
「はいっ!」
リオンは頭を上げ、元気良く返事した。
ほう、中々可愛いらしいところがあるじゃないか。
ワタシに謝りたくて機会を待っていただなんて。
「僕……この数年間で1000000000ポイント以上に魔力探査ピンを打ってずっとあなたの居場所を探っていたのです。
どんな魔物がかかっても位置を知る自信はありましたが、……やっとお会いできて本当に嬉しいですっ!」
怖ええぇ~!!
そういえばアースラも、そうやって執念深くワタシを探していたよ。
なるほど……エルがあんな所にいきなり現れたのは偶然ではなかったのだな。
それでもその他には別段怪しいところも無かったので、二人の勧めに従いエルの家に泊まってもてなしを受けることとなった。
エルもリオンもたいそうな料理上手で、夕飯はメインデッシュからデザートまで全てが美味かった。
しかも、リオンはずいぶん明るくなっていて、ワタシとも仲良く出来たし、よく笑う。会話も弾んだ。
ああ、人はこうやって変わっていくのだなァ。
あの時リオンの魂を砕いてしまわなくて、本当に良かった。
でも待てよ?
我が一族の長は『永遠の命を授けられた人間』の悲惨さを繰り返しワタシに語っていたが、何でこの二人はこんなに楽しそうなのだ?
くっ……騙しやがったな長老め。
明日この番外編は終了です。