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4.外の世界

 裏門のあたりには、思ったとおり誰もいない。

 複製した鍵を差込み、すばやく開けると再び鍵をかけ、城下の裏道を二人で走りぬけた。


 すぐ近くのとある裏路地に着くと、父に内緒で部下にした者に用意させた無人の馬車が、ひっそりと置かれていた。

 闇に紛れるように、それに乗り込み出発する。


 この馬車は、普通の町民が使うような質素な一頭馬車だ。

 目立つようなことはまずない。


 御者を用意しても良かったが、行き先を秘密にしておきたかった。

 それにもし途中で捕まれば、御者に迷惑がかかる。


 父上にバレないように配下に置いたと言っても、俺の部下はすべて15才前後の街の子供たちばかりだ。

 主従契約を結んでいるとはいえ、どちらかというと『友』と言ったほうが、しっくりくる。


 彼らには、本当のことは打ち明けていない。

 

 住むだけなら、世界中で我が国ほど良い国はないだろう。

 それなのに、国や親兄弟を捨てさせて、他国へ連れていくわけにはいかない。


 もう一人『王子』がいることも、母上の立場を慮れば言えるわけがなかった。


 俺は自ら手綱をとり、夜の街道を駆けた。

 そして明け方近くになってから、馬車の中に用意してあった大きなカバンからはさみを取り出し、ここ2年伸ばし気味にしていた髪を短く切る。


 もう、王子の俺とは決別する。

 これからは、弟と共に庶民として生きるのだ。


 自分で自分の髪を切るのは難しかったけど、元々器用なほうなので、多分何とかなっていると思う。


 次に、俺の金髪も一般市民に一番多いこげ茶に染め、服も更に簡素なものに替えた。


 それから、少し街道を外れた所で仮眠を取ると、再び馬車を走らせ国境近くのアルティナ山を目指した。


 

 そうして、1週間が過ぎた。

 用意してあった食料は乏しくなってきたが、旅はそれなりに順調だ。


 国内には関所のようなものはないし、13歳で馬車を駆って働く少年というのは、そう珍しいものではない。

 憲兵に呼び止められるということも無く、俺たちは進み続けた。


 さすがに体裁を気にしたのか、『王子出奔WANTED』などという張り紙は、今のところ街道に出てはいない。

 

 でも、自室に残した手紙を見つけているであろう父王は、今頃激怒しているはずだ。

 もう二度と、城には帰れない。


 だがそれでいい。

 俺は、代々の腰抜け王とは違う。


 安穏とした王子としての暮らしを捨てでも、弟リオンを守りたい。

 父王も目を覚まして、自分の知恵と力だけで、国を盛り立てて欲しい。


 それが息子としての俺からの、心からの願いだ。

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