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3.外の世界★

挿絵(By みてみん)

 いや、まだ何とかなる。

 その証拠に、この兵士はリオンを見たのに、捕らえようとはしない。


 少年神官の風貌までは、詳しく知らされていないのだろう。


 これは推測でしかないが、何か用が出来て地下神殿に行った父王が、クロスⅦの死体を見つけてしまったのではあるまいか?


 なんというタイミングの悪さだ。


 しかしリオンはもう、神官服などではなく、城内の下働きの子供が着るような普通の服を着ている。

 さらに言うなら、どうも少年には見えていないようだ。


 父上が我が子のリオンを『賊』と言ったことに衝撃を受けながらも、冷静に逃れる方法を探る。

 今逃げないと、リオンも俺も、確実に殺されてしまうと思ったのだ。


 頭の中で何パターンかシュミレーションしていると、兵士は俺を見つめて言った。

  

「……王子様。いくら面食いだといっても、可愛い女の子を連れ込んで、一緒に盗み食いしている場合じゃないですよ。

 王子の身に何かあったら、私どもがどんなに困るか、少しはお考えください」


 一兵卒のその男は、非常事態にもかかわらず、俺に説教を始めた。

 いや、一兵卒に説教されるのは昔からだし、うちの国のおおらかさが証明される良いところでもあるのだが、今は付き合ってる暇は無い。


「あの……神官服の少年、俺見たかも……」


 そう言うと、兵士は食いついてきた。


「どこです!!」


「3階の使ってない客室に、白い影が入っていくのをちらっと見たけど、お化けじゃなかったんだ……」


「3階!? 上はロイヤルエリアじゃないですか!!

 王子、しばらくここに隠れていて下さい、危険です!!」


 兵士は大声を上げながら、あわただしく去っていった。

 まんまと騙されてくれて、良かった。

 これでほとんどの兵が上に向かう。


 次は、おばさんを何とかしなくては。


「おばさん……賊は俺達を狙ってるらしいから、ちょっと様子を見てきてよ。

 この子も怯えちゃってるし、この食料棚の中に隠れてていい……?」


 これでも俺は『始祖王の再来』とまで言われている強さなのだが、恐ろしいことにおばさんの頭の中では、転んで「うえぇぇん」と泣いていた、幼いころのイメージが一番強いらしい。

 いつまでも俺を子供扱いしてくる。


 なので、怖そうにさっきのセリフを言うと、おばさんはフライパンと包丁で武装し、勇ましく厨房を出て行った。


 ……今だ!!


 心の中でおばさんに謝りながら、俺はリオンの手を引いて、裏口からすばやく走り出た。

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