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葬送(ヴァティール視点外伝)2

 さて、一番左端の小さな男の子はエルによく似ていた。

 金の髪も、あの瞳の色もそっくり同じだ。


 こちらもアリシアとエルの子孫のうちの一人なのだろう。


「……あれ? おばーちゃま、今、動いた気がする……」


 余計な事を言ったのは、エルにそっくりなその一番左端の子だ。


 しいいっ!!

 そういうことは、たとえ見てしまったとしても心の中にしまってそ知らぬふりをしておくものだ。

 そうでないと、葬儀の神聖なる雰囲気が台無しになるだろうがッ!!


 かわいそうに。顔はともかく、空気の読めないところまでエルから受け継いでしまうとは……。


「本当か?」


 ややしわがれた声は、エル本人のものだった。

 目を開けなくても、魂の紋様でワタシにはわかる。


 オマエも年を取ったんだなァ。

 初めて会った時はあんなにチビだったのに。


 しみじみしていると、エルがワタシの頬をゴツゴツとした手で触れ、撫で回した。


 誰が触って良いと言ったよ、このジジイめ。


 ジジイになど触られたくないのだよ。

 ワタシは美しいものだけが、好きなのだ。


 しかし、起き上がって文句を言うわけにはいかない。

 この体はアリシアのものなのだ。


 もし今動いたら、ここに集っているチビたちのトラウマになるだろう。

 夜中のトイレに一人で行けない体となること間違いナシだ。


 エルの事はどうでもいいが、アリシアの子孫たちは私の子供も同然。

 驚かせたり悲しませたりはしたくない。


 そしてワタシの可愛い娘アリシアの幕は、美しく厳かに閉じさせてやらねばならない。


 それが親としての最後の務めだ。


「アリシエル。お婆ちゃまはもう冷たくなってしまったから、動かないのだよ」


 私の頬に触れていたエルが、諭すように言う。


 それはいいが、そろそろ撫で回すのはヤメロ。

 気色が悪い。


 そうこうするうち、親族たちの長い長い別れが済んだ。

 いよいよワタシのターンだ。

 

 ……と思ったら、エルだけが居座っている。


 さっさと出て行け。

 オマエは『生きてるアリシア』と共に、もう数十年過ごしたのだろう?

 十分じゃないか。


 私の願いが通じたのか、エルが名残惜しそうに出ていった。


 これでワタシは一人きり。

 …………心置きなく、思いっきり泣ける。







 

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