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2.外の世界

 今は深夜。


 無人のはずのその場所に、明かりがともっていた。

 窓からそっと覗くと、ジェーンおばさんが何かを作っている。


 小さい頃から馴染んでいる、ジェーンおばさんならきっと大丈夫。

 俺は思い切って、リオンを連れて中に入った。

 今日を逃せば、また計画を練り直さなくてはならなくなるからだ。


 脱出が遅くなればなるほど、俺もリオンも命の危険が増してくる。

 簡単には仕切りなおせない。


 おばさんはドアの開く音を聞いて、ぎょっとしたように振り向いた。


「ど、どうなさいました王子? こんな遅くに……」


「え? うん。何か寝られなくて散歩してたら、ちょっとお腹すいちゃって。明かりがついてたから、来てみたんだ」


 嘘をつくのは心苦しかったが、仕方ない。

 俺とリオンが生き残れるかどうかの瀬戸際なのだから。


「まあ、そうなのですか? 相変わらずですね、王子は。

 でもこんな時間におやつを差し上げたことがばれたら、私が王妃様にしかられますよ」


 おばさんは、いつものような優しい口調で言った。


「ところで王子、その女の子は?」


 おばさんがリオンに視線を向ける。

 あ、やっぱり駄目だったか。髪も短く切ったし、何とか男の子に見えると思ったんだけどなぁ。


「……うん、昨日来た遊戯団の見習いの子なんだけど、国元が恋しいって泣いてたから、一緒に連れてきたんだ」


 俺は心を落ち着けながら、適当な事を言った。


「そういえば、以前にもそういう事がありましたねぇ。

 はい、お嬢ちゃん、お菓子をどうぞ」


 ジェーンおばさんは、戸棚から菓子を出して、リオンに渡した。

 リオンはそれを手に持ったまま、首をかしげている。


「ええ~!! 俺には駄目なのに、リオンにはいいのかよ」


「あたりまえです。

 この子にあげても、私は別に怒られませんから。

 あなた、リオンちゃんっていうの?

 まぁ、可愛いわねえ。色白で目が大きくて、お人形さんみたい。

 ほんとにここの王家の方々は、面食いなんだから」


 何? ジェーンおばさん。

 そういう風にじと目で見るのは、やめてほしい。

 本当は、リオンは弟なんだってば。


「ね、おばさん。おばさんの方こそ、こんな時間にどうしたの?」


 そう聞くと、おばさんは少し口ごもった。


「……その、私は料理人だからね。昼夜を問わず、研究しなくちゃならないのさ」


 そう言いつつ、すぐ後ろにある銀のトレーを隠すように立つ。

 見覚えのあるそのトレーは、俺が毎朝リオンのかわりに受け取っていたものだ。

 どうやら、地下の秘密部屋に食事を吊り下げていたのは、ジェーンおばさんだったようだ。


「王子、ウロウロするのも社会勉強だと思うけど、世の中にはウロウロしたくても出来ない子供もいるんだよ。

 お菓子を食べられない子供もね。

 さ、こんなところで油売ってないで、部屋に帰った帰った!!」


 おばさんは、俺を追い返そうとする。


 いや、帰れないんだって!!

 俺たち、これから家出するんだって!!


 どうしたものかと思っていると、突然厨房のドアが勢いよく開け放たれた。

 やってきたのは、よく顔を知っている下級兵士だった。


「王子!! どうしてこんなところへ!!」


 兵士は、驚いたように叫んだ。

 ……しまった。何か不測の事態が起こったようだ。


 もしかして……バレた?


「……おまえこそ、こんな夜中に厨房に飛び込んでくるなんて、どうしたんだ? 

 腹でもへったのか?」


 動揺を悟られないよう兵士に聞くと、彼は敬礼しながら事情を報告し始めた。


「王子、実は城内に、魔道を使う他国の少年神官が侵入したようです。今、王命により、その賊を探しているところです」


 げ。

 やっぱり、バレている。

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