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アリシア外伝2  掴む手 1

アリシアがヴァティールの侍女となった頃のお話です。

今回は珍しくシリアスです。

 こんなことなら、見栄を張るんじゃなかった……。

 激しくそう思ったけれど、もう遅すぎる。

 そう、遅過ぎるのだ。


 私がヴァティール様にお仕えするようになってから、数日が経った。


 『か弱く控えめな女性』である私がどうしてその任についているかと言うと、城の男どもが揃って腰抜けだったからだ。


 ヴァティール様の『お世話係』を王から打診された者は十数人。

 いずれも剛の者として知られた勇士ばかりであった。


 お世話と言っても実質は見張り。

 ヴァティール様のおそばに控えながら食事を運んだり、簡単な掃除をするだけでよかった。

 

 しかし屈強な彼らは皆、文字通り腰を抜かして病気になる有様だった。


 彼らは、最後まで城壁の上から長弓で戦った戦士でもある。

 漏れなくヴァティール様がアレス軍を焼き溶かすところを見ており、その後は城外の始末のために外にも出ている。


 ドロドロに溶けたアレス軍十万の鎧は、溶岩のように固まった大地の上にこびりつき、城外はまるで地獄のような光景だった。


 リオンは元々『死神』とまで言われ、恐れられていた。

 その外見のまま、ここまでの事をやらかしたヴァティール様が、皆から畏怖されるのは当然のことなのだろう。

 

 仕方なく、エルが手を上げ世話役を買って出た。

 剛の者でも寝込む有様なのだから、その辺の召使に声をかけても無駄だと悟ったのだろう。


 だがリオン亡き後、城で一番腕が立つのはエルだ。

 あんなすんごいブラコンでも、役に立たなさそうな優男風の外見であっても間違いなく彼なのだ。


 彼を小間使いにするのは、戦中である今は痛過ぎる。


 大体、『亡き弟の体を乗っ取った魔物の身の回りの世話をせよ』というのはあまりにも残酷な話だ。


 私だって鬼と言うわけではない。

 王も私もエルにだけは『その役』をさせてはいけないと思っていた。


 でも、この恐ろしい魔物をこのまま放置というのもかなり不安だ。


『いつかリオンは蘇る』


 エルはそう言っていたわよね。

 では、それを信じよう。


 信じてリオンの体の側で待っていよう。


 リオンが目覚めたとき、一人だったら可哀想だ。

 私の事は嫌いだろうけど、それでもここで頑張って勤め上げれば、一番に彼に「おかえり」って言えるかも。


 そう言ったら、リオンは少しは喜んでくれるかな?

 前は失敗しちゃったけど、今度は仲良くなれるかな?


 そう思い、ほんのちょっぴりの下心とエルに対する見栄で、私はヴァティール様の侍女として名乗りを上げたのである。



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