エルとリオンのトホホ外伝12
『兄に危害を加えたり、酷く侮辱する者は 取 り あ え ず 殺ってしまえ』
と、いうリオンを王はどうやって納得させたのであろうか?
俺ですら相当苦労するのに。
いや、アルフレッド王ならリオンの一人や二人、丸め込むことは可能かもしれない。
武術はからきしだが、口から先に生まれてきたような方だからなぁ。
頭の中で結論を出していると、リオンが言いにくそうに口を開いた。
「例の『コンテスト記事』は、兄様に知れるとクレームがつくかもしれないから、出来れば内緒にするようにと王から要請がありまして、その通りにしてしまいました。
今まで黙っていてごめんなさい、兄様」
リオンが申し訳なさそうにペコリと頭を下げる。
うお、何もかも王の差し金か。
自分がモテないものだから、俺の地位の方を下げようってわけなのか。
「それにしてもリオン、兄である俺より、王の方を重んじて俺に秘密を作るなんて駄目だぞ?
いくら相手が王と言っても、今回の事、俺はとても悲しい……」
リオンの肩に手を置いて、そっと呟けばリオンは頭をブンブンと振った。
「違いますっ。酷い誤解です!!!
僕が一番大切なのは、兄様一人に決っていますっ!!!」
「それじゃあ、どうしてあんな馬鹿馬鹿しい記事の発行を納得したのだ……?」
リオンの瞳を覗き込もうとすると、フイっと目を逸らされた。
いったいどうしたというのだ。
素直で可愛い弟が、この俺にこんな態度を取るなんて。
も、もしかして、これが噂に聞く『反抗期』というやつかっ!!
これからは、
「兄様のパンツは僕のとは一緒に洗濯しません」
とか、
「靴下が臭い」
とか、
「もう一緒に寝ない」
とか、言われてしまうのか!?
「くッ……」
これも成長……成長の証なのだ。
反抗期が来て『寂しい』なんて思ってはいけない。
こらえろ俺。こらえるのだっ!!
「………………兄様ごめんなさい。
正直にわけを話しますので、どうか泣かないで下さい」
こらえきったと思っていたが、一筋の涙が頬を伝っていたようだ。
さすがにコレはちょっと情けないか……。
アリシアの、
「やーい、泣いてやんのっ!」
という俺を馬鹿にした顔と声が何故か脳裏に浮かぶ。
しかし、
「兄様、屈んで?」
とリオンに可愛らしい声で言われ、とりあえず屈む。
「兄様、いい子、いい子」
と、リオンは俺の頭をナデナデしたあと、ボケットからハンカチを出してそっと涙を拭いてくれた。
なんて優しい子なのだ、リオンっっ!!
アリシアだったら俺が泣いてるのを見ても、指を差して大笑いしているだけだろう。
なんだかちょっと情けなくはあるが、リオンは『俺が普段リオンにしてやってる事』を真似してそうしてくれたらしい。
「弟の教育もろくに出来ない馬鹿」
とアリシアは罵ってくれたが、ちゃんと優しい良い子に育っているではないか。
俺は一ミリルたりとも間違ってはいないっ!!




