エルとリオンのトホホ外伝6
部下の嘘をたちどころに見抜くとは、さすが王の器!!
素晴らしい眼力だ!!
……と、褒めたいところだが、そうもいかない。
「いえその、ごごご、誤解です!!
それにほら、王は男連中には大変おモテになりますしっ!」
そうなのだ。
王は基本優しいタイプで、部下の面倒見は大変良い。
なので、王のためなら命をかけるという部下が、この城や城下には大勢いる。
これは本当。
必死に取り繕う俺に、王は益々冷たいまなざしを向けた。
「それで慰めているつもりなのかね。
どうせ私は男にしかモテないよ。
しかし、それを君はとやかく言えるのかね」
「えっ!?」
王からの思わぬ言葉に、一瞬固まる。
「君は名誉ある親衛隊員。素行に問題があってはいけないので、簡単にではあるが調べさせてもらっている。
調書には年齢=彼女いない歴……と書かれているが、それについてはどう思っているのかね。
そんなありさまで、モテ自慢が出来るとでも思っているのかね」
冷たい視線が突き刺さる。
「いえその……あの、じ、若輩者の身で大変失礼いたしましたっ!」
俺はそう言って深々とお辞儀すると、慌てて王の部屋から退出した。
親衛隊員と言っても、俺の職務の実態は賭博闘技要員。
それなのに、普段の素行や彼女いない暦まで調べあげられていたなんて。
さすがに俺が『エルシオンの王子』であったことにまでは気がついていないようだが……いったいどこで聞き取り調査をしたのだろう?
何故か王は知っていた。
俺に、かつて一度も彼女がいなかったことを。
16歳になったこの日まで、たった一人さえ彼女がいなかった事を。
王に腕利きの諜報部員がいることは俺も噂に聞いていた。
しかし、どうせなら俺が多数の女性から告白されていた事もちゃんと報告しておいて欲しかった。
その情報は、どうも王のところには上がっていないようだ。
きっと、王の諜報部員が『モテ男』の俺を妬んでの事なのだろう。
嫉妬で仕事に私情を挟むなんて……なんて嫌な奴らだ。
リオンとは大違いだ。
きっと顔も性格も不細工なのに違いない。
あ~あ。
アリシアだけでなく、王にまで『モテない男』認定されていたよ……。
何だか情けない。




