エルとリオンのトホホ外伝5
う~ん。
何故そんなにも王は不機嫌なのか……。
わけがわからないが、取りあえず謝っておくか。
何か、俺の気付かないところで失礼があったのかもしれない。
ハッ! そうだっ!
もしかしたら、俺が、
『アリシアには冷たくされるが、一般女性には大変モテる』
という話ばかりしたから、そこがちょっとイラッとしたのかもしれない。
何だかよくわからないが、王は『モテた事』が一生に一度すらも無いらしいし。
ああ、早めに王を怒らせてしまった原因がわかって良かった……。
もう俺は職を持ち、給料も貰っている。
つまり、年若くとも『大人』なのだ。
いつまでも子供気分でいるのは、アリシアの言う通りマズイ。
きちんと空気を読んで謙虚に王に仕えねば、社会人失格になるところだった。
あ~、アブナイ、アブナイ。
「いえ王がおモテにならないなど……そんなこと、あるはずもありません。
自分はそんな事、思った事もありませんっ!」
俺は社会人らしく、謙虚にそう叫んだ。
上司を良い気分にさせておくのも、部下の大切な仕事。
そのことを思い出したのである。
しかし、俺の目が一瞬泳いだのを王は見逃さなかった。
そうなのだ。
実は王は本人の申告通り、モテない。
これまでの1年少しで、モテてているのを1度も見た事が無い。
というか、王は側に女性を置くこと自体がほとんどないのだ。
身の回りの世話をするのも男性従者のみ。
王に付き従う護衛の猛者たちも、当然ゴツイ男ばかり。
アリシアと仲良く喋ってる姿を時々見かけることはあるのだが、外見はともかく、中身は誰より男らしいアリシアだ。分類するならむしろ『男』として王の中ではカウントされているに違いない。
そして王は、いつも究極に忙しいので『女遊び』などする暇は無い。
従ってモテる暇などあろうはずも無い。
決して王を軽んじたわけではないのだが、王は俺が嘘をつき、お世辞を言ったことを一瞬で見抜いた。
王がアリシアと仲良く喋っていたのは、エルとリオンの正体を探るためでもありました。
そして、『分類するならむしろ『男』として』というのはある意味当たっていて、サバサバ男らしいアリシアは、けっこう王に好感を持たれていました。男前な部下としてですが。




