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アルフレッド王編・夢の国の果て 10

 私は王家の血を継ぐ最後の一人。私に目をつけ『飾り物』として担ごうとする者が必ず現れるはずだと考えた。


 自ら皇太子の地位を退き、欲の無い領主として辺境で過ごすことを望む惰弱な王子。

 利用するならこれほど都合の良い者もいないだろう。


 そんな予想は間もなく当たり、野心に目をぎらつかせた人物が私の前に現れた。

 到底私と共存できるタイプではない。

 彼は国をますます荒らすだろう。


 しかしそんな感情は隠してにこやかに受け入れ、担がれてる振りを続けながら私自身の力を蓄えていった。


 国を失った私は変わった。

 民衆や配下の支持を得るため、表では優しく振る舞い、裏では相当汚い事もやった。


 私を担いで実権を握ろうとしていた者は時機を見て謀り殺した。

 絵描く理想の一番の障害となるのが彼だったからだ。

 

 ああ。

 エルシオンは私にとってあまりにも遠い。


 汚れきった私はもう、あの国の人々のように生きることは出来ない。

 でも、それで良いのだろう。


 あの麗しの国はもう無い。

 巨大帝国アレスに侵略されて、エルシオン王国は一夜で無くなった。


 やはり、あの国のやり方では駄目だ。

 あんな『ぬるい国』が今まで存在できたこと自体が奇跡。


 滅びるのは当然の理だと言えるだろう。


『善意』という砂の上に建てられた夢の国。それがエルシオン。

 どれほど高度な文明を誇ろうと、欲にまみれた人の世に存続し続けることは所詮不可能な事だったのだ。



 忙しい毎日を過ごすある日、部下から『面白い3人を見つけた』との報告が上がった。

 そのうちの一人の少年を見て、すぐに気がついた。


 麗しかった、あの皇太子ご夫妻のお子なのだと。


 彼の名前はエル。

 庶民にありがちな名ではあるが、おそらくは行方不明になっているエルシド王子。


 しかしエルシオンには始祖王による絶対法律があり、妾妃を持つことは出来なかったはず。

 公式にも、幼い妹姫が一人いるだけとされている。


 なのにこの少年には『弟』と『姉』がいた。

 髪の色を変えるだけでは追っ手から逃れることは出来ないと踏んで、偽装家族を雇ったのだろうか?


 だとしても、それは好都合。


 アレス帝国はエルシド王子を血眼になって探していた。

 さりげなく保護出来るのなら、そのほうが良い。


 万が一バレた場合は『知らなかった』ことにして切り捨てることも出来るから。


 大恩ある方々のお子とはいえ、私は王。

 ぬるい感傷で全てを台無しにする気はない。


 追求はやめた。

 今から拾うのは、頼る者のいない可哀想な子供たち。

 

 ……私はそしらぬ振りで王子に話しかけた。





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