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外伝・アルフレッド王編・夢の国の果て 1

「いや、リードランドの王は本当に上手いことやりましたな。

どうです、わが国も続いては……?」


 アホな臣下のそんな一言から、わが身の不幸は始まった。



 僕の住むこのブルボアは小国だ。

 おまけにめぼしい資源も無い。


 そんなことは7歳の僕にだってわかる。

 昔ながらの遅れた農耕だけで細々と生計を立てている民がほとんどの、大変地味な国の一つなのだ。


 だから王子といえど、大国のような贅沢は望めない。

 まして王宮書庫の管理人風情の母から生まれた、名ばかりの長子ならばなおさらだ。


 とはいえ、質素を好む母に育てられた僕は、質素な暮らしの方が性にあっていた。

 贅沢など出来ずとも十分満足だったのだ。


 食うに困るわけでなく、着る物はそれなりに上質だ。

 物語に出てくる流れ者たちのように、寝る場所に不自由することもない。

 大好きな本だって、好きなだけ読める。


 母からは、


「陛下はいずれ正妃様をお迎えになります。

 しかるべき姫様の生むお子が皇太子として立つはずですから、そのように心得なさい」


 と、物心つくころから言い聞かされてきた。


 それに不満もなければ、野心も無い。

 歴史の本に出てくるような猛々しい王子と僕とでは、全く違っていたのだ。


 そんなわけで臣下からは少々あなどられる事もあったが、重責を背負うことも無く好きにさせてもらえた。


 そして間もなく、母が繰り返し言っていた事が現実となった。

 棚ボタ的に王の位に就いたとはいえ、父だっていつまでも正妃を迎えないわけにはいかない。


 父王の婚儀がとうとう決まってしまった。


 ウチは大国ではない。

 政治的な駆け引きの下、やはり大国とはいいがたい国から釣り合いの取れた姫君を正妃として迎えることになった。


 政略結婚により父王に嫁いだ正妃様は『物語に出てくる姫』のように美しくは無かった。

 しかし、おっとりとした優しい女性だったので、母はとてもホッとしたようだ。


 正妃様は比較的僕らに親切だったし、母も身分低い自分をわきまえて正妃様を立てに立てていたので特に衝突も無かったように思う。


 現状にすっかり満足していた僕や母。

 本に囲まれて平和に過ごせていれば、それだけで良かった。


 しかし父王や他の貴族達はそうではなかった。

 そして一発逆転を狙って『富クジ』を買ってみることにしたようなのだ。


 富クジ……と言っても、物の例えである。

 本当に買うわけじゃない。


 何でもウチより貧しい『小国の幼い姫』がたいそう見目麗しく、大国エルシオンの若き皇太子に見初められたそうなのだ。


 おかげでその国から、莫大な援助金が寄せられたのだとか。


 それだけではない。

 洪水の起こりやすい地域には堤防を築き、最新の農法もタダで提供してくれたらしい。


「よし、ウチもッ!!

 我が国民の末永い幸福のため、必ずや美しい姫を産ませて大国に嫁がせてみせようぞぉぉっっ!!!」


 アホ臣下にそそのかされた我が父王は、それはもう生き生きと返事したそうな。

 そうして美しい娘に手をつけまくった。


  

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