アリシア外伝・窓の外の雪 28
「やあ、アリシア。顔が明るいところを見るとリオンとは上手くいったようだね」
「はい。これも全て王のお陰ですわ」
お礼と報告を済ませ、忙しい王のお邪魔にならないようにすぐ退出する。
凄く幸せな気分だったのに、そこには鬼のような顔をしたエルが立っていた。
「あ、あらエル。どうしちゃったのよ。そんな怖い顔をして。
予定より遅くなったのは悪かったけど、でも……」
わけを話そうとする私の声をさえぎり、エルは唸った。
「………………よくも」
「えっ!?」
「よくも俺の可愛い弟に『金○』とか『股間』とか教えやがったなぁぁっ!
リオンはな、帰るなり嬉しそうに俺のところに来て『アリシアさんに今日、金○と股間という言葉を教えていただきました~❤』って言ったんだぞっ!!」
「え……まあ、そういう話は確かにしたけど、それは」
誤解を解こうとした私をさえぎり、エルは更に吼えた。
「言い訳は無用!! 俺は知ってるんだからな!?
お茶屋さんの中ではリオンに『今日はいてるパンツ』について聞いたんだって!?
色とか模様とか形とか。
……いったいどこをどうすればそんな話題になるんだよっ。オマエは痴女か!?
やっぱりアリシアと二人でなんか行かせるんじゃなかった…………俺の……俺の天使になんてことをぉぉぉっ………………!!」
そう言うと、エルは大理石の床に泣き伏した。
後日談だが、私とリオンは結局仲良くはなれなかった。
何故なら気の利かない男・エルが私を悪逆非道の超危険痴女としてリオンに散々刷り込んだのだ。
なるほど。
これじゃあリオンに友達なんか出来るわけが無い。
でもまあ、リオンとていつまでもお子ちゃまってわけじゃないだろうし、いつかまた彼と楽しく話が出来る機会もあるだろう。
二人で過ごしてみてわかったが、あの子は駄目な子でも嫌な子でもない。
あのアホ兄が全部悪いのだ。
でも今に見てなさい。
春には雪が解けるように、きっと仲良くなってみせるからっ。
END
エルがリオンを極端に甘やかすのは、元々身内に甘い性格と言うのもありますが、一度自分の暴言でリオンを自死させているからでもあります。
もうほんの少しでさえ傷つけたくはないのです。
まあ、自身も子供であるが故の浅はかな考えではあるのですが。
そしてアリシアのことを散々に言ったエルですが、根が明るいので翌日にはケロッと忘れてアリシアとも普通に楽しく話してます。
何事にも真面目なリオンだけが兄の話を盲目的に信じ、引きずります。
ダメだよ、兄ちゃん!!
次はちとバタバタしているので2週間あきます。
誰の話になるかは次回の活動報告で。
読んで下さってありがとうございました!
大感謝です❤