アリシア外伝・窓の外の雪 2
そんな風に思っていたある日、私とリオンは王にお使いを頼まれた。
多分王が、見るに見かねて私とリオンが少しでも仲良くなれるよう、気を利かせて下さったのだろう。
一方、全く気の利かないエルは、私と弟のお出かけをまるで『今生の別れ』のように名残惜しんだ。
「王の命令じゃ仕方ないけど……リオンは町には慣れてないんだっ!
それに領地内にはゴロツキがいっぱいいるから、ちゃんと守ってやれよ?
絶対に目を離しちゃ駄目だからな!
迷子にならないように手を繋いで……いやいや、可愛いリオンと手をつないでいいのは俺だけだし。う~ん……」
「んじゃ、迷子紐でもつけとく?」
「何を言うんだっ!! 犬じゃあるまいし!!」
エルは美少年にはあるまじき事に、つばを飛ばしながらくってかかってきた。
「そうですよ。アリシアさんは本当に意地悪ですねっ!」
……いや、本当に意地悪だったら、迷子になろうと知ったこっちゃないんだけどね。
「リオン……可哀想に」
「兄様……ぐすん」
二人はひしっと抱き合った。
けっ! 馬鹿馬鹿しい。
たかが『お使い』ぐらいで、よくここまで盛り上がれるものだ。
それにオマエが必要以上にリオンを甘やかし、不憫がるから彼はあんなにも排他的になったのだ。
男ならびしっと突き放すべきところは突き放し、リオンを男らしく育ててやれよ。
あの子は今でさえ桁外れに強いんだから、上手く育てれば、ごつい男たちにさえ羨望の眼差しで見られるほどの『漢』にだってなれるっつーの。
まったく……やってらんねーよ、と思うが二人でのお使いは『王直々』の命令。
受けた以上はもう断れない。
顔だけ綺麗なアホ二人組みをどうにかこうにか丸め込んで、私とリオンは町の市場へと出発したのだった。




