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6.鳥篭の外へ

「や……違う! 違うって!!」


 むしろ反対。うちの王家は美形が多いと言われ、実際妹も兄馬鹿目線を差し引いても超かわゆいし、母も息子ながら見とれてしまうような美女だ。

 あの馬鹿父でさえ、国内で並ぶものは超絶美形な母の兄・エドワードぐらいしか思い当たらない。


 しかしリオンの容姿も、相当なものだ。

 そして、男にしておくのは……本当に惜しい。

 可愛すぎる。


 失礼にあたるので、当人の前では言えないが。


 そういう俺も今でこそ『男の中の男』だの『始祖王シヴァの再来』だのと言われているが、幼いころは女の子のように可愛いと言われ、女の子が欲しかった母などは、俺にヒラヒラのドレスを着せて遊んだりもしていたようだ。


 俺は全く覚えていないが、悲しいことに証拠の肖像画が残っている。


 ああ、そうか。

 今のリオンなら、むしろ女の子の服のほうがよく似合う。


「ちょっと待ってろよ!!」


 そう言って俺は元来た道を引き返し、下働きの女の子用の服を倉庫から失敬してきて、弟に渡した。


 年の幼い下働きの少年少女たちは、孤児がほとんどだ。


 国は、行き場のない子供を国立教会に引き取って学校に行かせ、服や食事を支給する。

 それと同時に、子供たちも無理のない範囲で国のために働き、将来身を立てるための技術を身につけていく。


 働かせることがメインではないため、支給される女の子の服は、かわいらしいものが多い。


 俺は、リオンのふわふわの髪によく合うように、ふわふわの水色の長いスカート、それに薄ピンク色のふんわりとした上着を選び、手渡した。


 そうして前回同様、リオンの肌を見ないよう、最大限注意して着せていく。

 弟の半裸を見て赤面するような、アホな失態を繰り返すわけにはいかないからだ。


 よし。

 さすがに二回目は、冷静に着せられた。(多分)


 見たかエドワード。

 俺は変態などではない。

 弟を手伝ってやる、思いやり深い良い兄だ。


 ホッとして、さっきまで背けていた顔を戻し、弟を見る。


 ……う、似合うっっ!!!!


 少女の服を着たリオンは、とんでもなく可愛らしかった。

 似合いすぎて、ちょっとマズイぐらいだ!!


 言葉もなく立ち尽くしていると、またリオンがシクシクと泣き始めた。


「……やっぱり……この服も似合わないのですね。

 着る本人が醜いのだから、服をいくら換えたって……ううっ……」


「ち、違う!! そうだ、眼!!

 いつもそうだったから、うっかり忘れていたけど……その目隠し、とって見ろよ。

 そうしたらわかるから」


 慌ててそう言うと、リオンは困ったように首を振った。


「鍵は、クロスⅦのポケットの中です。

 ……今頃氷室の中のクロスⅦと一緒に、カチカチに凍ってます。だから……」


 そ、それはちょっと取りに行きづらい。

 仕方の無い事と割り切ったつもりだが、今更死体を見たくは無い。


「馬鹿だな、鍵なんか無くても目隠しは皮で出来ている。

 リオンのエラジーを貸してくれるか?」


 エラジーは、リオンが持たされている武器だ。

 初代クロス神官が、『大魔道士アースラ』から直接授けられたらしい。

 鞘は手のひらほどの大きさの古びた金属なのに、引き出されると鞘自体も変形し、ごく細身の長刀となる。


 注意深く受け取ったエラジーを使い、俺は目隠しの一番細い部分を切った。

 そこから現れた大きな瞳は、俺と同じ淡い朱の宿った金色だった。


「……兄様…………」


 その瞳から、涙があふれる。


「ずっと、兄様のお顔が見たいと思っていました。

 思っていた通り、お優しそうでお美しくて……僕なんかが弟で良いのですか……?」


「当たり前だろ!

 それにお前は、すっごく可愛いよ。服だってとても似合っている」


 そう言って抱きしめてから刀身をかざし、映る姿を見せた。

 残念ながら、部屋に鏡は無かったからだ。


「あの……この服には色があるのですね。……綺麗……ですね……」


 リオンはびっくりしたように、スカートのすそを両手でつまんだ。

 そうすると、白く細い脚の大部分があらわとなった。


 うわわわわっ! 


「ば、馬鹿、駄目だろはしたない!!」


 思わず大声を出してしまう。


「え!? 『はしたない』って何ですか?

 どういう意味の言葉……なのですか、兄様?」


 大きな瞳をぱちくりとさせて、リオンが聞く。


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