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外伝 ヴァティールの独り言8

 アースラは自分で決断し、ワタシを『戦の兵器』とするために妹を使ったくせに、まるでワタシが『妹の仇』であるかのように扱いだした。


 オマエがワタシをあの体に突っ込んだのだ。

 どう考えても、妹の魂が消滅したのはオマエのせいだろ。バーカ、バーカ!


 アースラの妹が死んだことで、その女の赤子の養育役がワタシまわってきた。


 赤子は大変可愛かった。

 柔らかな金の巻き毛に、青空のような澄んだ瞳。

 今までに目にした人間の中で、一番愛らしかったように思う。


 アースラにイビられる日々を送っていたワタシにとって、幼子の存在は救いだった。


 人間なんて、わずかな寿命しかない弱い生き物でしかないと思っていたが、違う。

 ワタシは確かにこの…………か弱い人間の子供に救われたのだ。

 

 もちろん赤子の世話は大変だった。

 想像以上に大変だった。


 眠っている時はただただ愛らしいばかりなのだが、目を覚ますと絶叫するように泣く。


 この体は実の母親のものではあるが、中身はワタシ。

 気配の違いを感じたのだろう……赤子は中々私に懐かなかった。


 その頃には戦争は終結に向かっていたので、ワタシは地下神殿を出ることはほぼ許されておらず、赤子の世話をするだけの毎日だった。

 もちろん、力のほとんどは封じられたまま。


 生きた燃料として魔力を絞られながら、泣き続ける赤子を一晩中抱いてあやし、下の世話もした。


 抱っこしていると鼻水やよだれをなすりつけられるし、何でだかわからんが、すぐに体調を崩す。

 泣きすぎればせっかく与えたミルクは吐くし、それはワタシの服にかかった。


 アースラに封じられているワタシは魔力が使えない。

 仕方がないので、自力で地下の湧き水を使って洗濯する。

 そんなことの繰り返し。


 見かけは人形にように愛らしいのに、人間の赤子の行動は悪魔よりえげつなかった。


 何でワタシがこんな目に……。


 床に叩きつけてやろうかと思ったことも何度かあったが、そんな事をすればアースラにどんな目に遭わされるか知れたものではない。


 それでも奴は人間。

 ワタシが魔力を使えずとも、『時』がアースラをいずれ殺す。


 


 

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