表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
297/451

外伝 ヴァティールの独り言6

 何度も言うが、アースラは本当にえげつない奴だった。

 魔族のワタシですら、ドン引きするような奴だった。


 幼い頃、森で死に掛けていたところをシヴァ共々助けてやったこともあったというのに、孤児を使って私を捉えた挙句『伏せ籠に捕まった鳥みたいだ』と抜かしやがった事は一生忘れない。


 そんなあいつは表では聖人の顔を通し、悪行はすべて隠蔽したため国民には熱狂的に慕われていたっけ。

 でも、リオンはずいぶん不器用な性格だったようで、アースラとは全然違う。


 もしこれがアースラであったなら、あのやり手の王すら手玉にとって、この国どころか近隣国まで支配していたことだろう。

 もちろん、国民たちには熱狂的に慕われながら。

 

 アースラは顔だけは良かったので、立っているだけで様になった。

 どちらかというと、リオンのような中性的な優しげな容姿で、その腹の中が真っ黒だなんて、普通の人間は思いもしない。


 暮らしぶりも質素で、私財は魔道具だけ、着るのは質素な神官服だけ。

 女をはべらせることも遊びにふけることも一切ない、つつましい暮らしぶりだったから、そういうのも馬鹿な国民どもにはウケたのだろう。


 しかし奴の本性は悪。

 二重人格のアースラにこき使われる奴隷生活は、これ以上ないぐらいに悲惨だった。


 それこそ、同属に白い目で見られる『ひゃっはー』を強いられるは、空を飛べなくて窓から落ちるはで散々だ。


 失敗をすればそれがどんなに些細でも、イヤミ×1000。


 本体は取り上げられて行方知れず。


 人間に私の本体を壊せるとは思わないが、多分魔道の研究には使われたことだろう。


 おかげで結構好きだった人間が大嫌いになった。

 ワタシを縛る王家の存在も憎い。


 ただ、シヴァ王は好きだった。

 唯一ワタシに優しかったのが彼だったからだ。


 森で助けてやったことも覚えていたし、アースラの所業も詫びてくれた。

 裏表の無い、優しい奴だったのだ。


 シヴァ王自体はアースラほどの力は無い。

 剣技はたいしたものだったが、それでも人間の範疇。


 目先の国民を導いていかねばならぬ身だったので、アースラと決別してまでワタシを救うことは出来なかったが、考えうる限りすべての配慮はしてくれたと思う。


 それに、養女が可愛かったので何とか耐えられた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ