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4.鳥篭の外へ

 急がねば。


 父上は、俺の味方なんかじゃない。

 伯父のエドワードだって、きっとそうだ。


 誰かにこの事を知られれば、リオン共々始末されてしまう。


 年の離れた妹が出来たときは、嬉しかった。

 小さな小さな妹を見て、本当に可愛いと思った。

 でも妹は、いざというときの『俺の代わり』として生まれてきたのだ。


 俺も王家に生を受けたからには、それ自体は納得できる。


 元気そうに見えても、病や不慮の事故、もしくは暗殺により、跡継ぎがコロリと死ぬなんていうのは、よく聞く話だ。


 特にわが国には、魔法医が一人もいない。

 だから俺にもしもの事があったなら、妹には立派な女王となってほしい。

 そう思っていた。


 でも、操り人形にならないからと言って自分の息子を王が殺し、妹姫を後に据えるなんて、正気の沙汰ではない。


 父王の思うとおりになんて、絶対にならない。

 俺が不要というのなら、俺だって国も父も不要だ。


 俺のことを心から必要とする弟を連れて、国を出るまで。


 結界なんか無くとも、ウチの国にはエドワードをはじめ、優秀で勤勉な人材が揃っている。

 軍隊だって、他国以上の最新装備を揃えているし、兵士の数も負けちゃいない。


 クロスⅦとリオンがいなくなれば、馬鹿な父王もさすがに目が覚めるに違いない。

 そうさせるためにも、俺たちはこの国に居ない方がいいんだ。


 これからは、結界などに頼らぬ真の政治を行ってくれるくれることを願いつつ、準備を続けていった。


 決行は1週間後。

 それだけあれば、城外にいる俺の部下に、最後の手はずを整えさせることが出来る。


 もちろん、脱出する気なら今からでも出来るが、まだしばらく時間を稼げそうだ。

 色々なことを済ませて、心残りなく城を後にしたい。


 父上は、長い外遊でたまった仕事をこなすのに、当分忙殺されるはずだ。

 地下にいるリオンのことなど、今までどおり、気にも留めていないだろう。


 俺はこの日のために、長い時間をかけて準備してきた。

 皆に気づかれぬよう城を抜け出すことが出来さえすれば、そう易々と捕らえられはしない。


 俺はリオンを連れて脱出し……もう、この城には戻らない。


 ただその前に、リオンを『妹』に会わせてやりたい。

 リオンは妹姫に会ったことが無い。

 今生の別れになるかもしれないのだ。




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