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リオン編   戦火再び2

 僕はまた、あの大嫌いな隊服を着て戦った。

 夜襲にはあの服が最適なのだ。


 でも、やだなぁ。

 あの黒い服は本当に気がめいる。


 せめてもう少し、兄さん好みの可愛いデザインにして欲しかった。

 たとえば、可愛い子供用の燕尾服……それも、赤いチェックの半ズボンとあわせたものが今の兄さんのお気に入りで、アレで戦えないものか、真剣に考えた。


 でも今回も、王に却下された。

 赤は目立つし、耐火仕様で無い服は認められないとの事だった。


 いやまあ、それはもういい。

 そんなことを言っている場合じゃないことは、僕にだってわかる。


 でも前の時だって、一生懸命に戦ったら『勝利』を手にすることが出来た。


 今回だって、きっと勝利をもぎ取ってみせる。

 かつてのアースラ様がそうだったように。



 戦いが始まった。

 僕は兄の協力を得て、千人からなるアレスの先兵を見事焼き滅ぼした。

 

 千人程度の部隊なら『善の結界』の範囲にかろうじて収めることが出来る。

 兵糧のありかをしゃべらせて焼き払い、ついでに魔炎でほとんどの兵を焼きつくす。


 ただ、最強レベルの術は体への負担が大きい。

 ほんの1時間程度の展開さえ、相当にきついのだ。


 そのため兄の待つ地に戻る頃には、声を出すことも出来ないほど疲れ果てる。


 そんなふうに頑張り続けても、戦況はどんどん苦しくなる一方だった。

 敵は次々と部隊を繰り出し、1万や2万の兵を倒しても劣勢であることに変わりはない。


 せめて援軍でも来れば……一瞬そう思ったが、頭を振る。


 同盟国はアレス帝国にはむかう事など出来ず、とっくに盟約破棄を通達してきている。

 援軍が来ることは無い。

 さすがに疲労がたまってきたが、僕が頑張るしかないのだ。

 

 それにしても、国同士の神聖な盟約まで破るだなんて。


 やはり、アースラ様は正しかった。

 この穢れた世で秩序を保つには『善の結界』がどうしても必要なのだ。


 僕が完全体であれば、結界の範囲を操り、他国の王たちの心を清らかにして盟約を死守させることも可能であった。

 いや、そもそも半径100キロル内に敵の侵入を許すことさえなかった。


 でも今の僕の力では、到底無理。

 あきらめるほか無い。


 戦う力を残しているのは、もはやほんの少数の部隊のみ。

 それも再編成を繰り返した、統制がいきわたってないツギハギ部隊ばかり。


 そのわずかばかりの部隊だって、いずれアレスの大軍勢に踏み潰される。



 追い詰められて篭城戦に追い込まれるまで、半月もかからなかった。

 そんな馬鹿なと思ったけれど、事実だった。


 もうすでに城の周りは、目の覚めるような青で埋め尽くされている。

 独特の青い色の鎧をつけた、アレス帝国兵が我々を囲んでいる。


 勉強半ばでエルシオンを出た僕は、外界には詳しくなかった。

 まさか『ただの人間』に破れることがあろうとは……。


 今の僕はあまりに未熟だった。

 『組織力』で攻めてくる『数の攻撃』には到底かなわない。


 僕の力だけではアースラ様がなさったような、ほぼ全軍をカバーするような戦い方はできなかったのだ。







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