3.鳥篭の外へ
「心配するなリオン!! 俺がついているからなっ!!
クロスⅦの死体はどうした?
見つからないように、始末しなければ……」
俺はもう覚悟を決めた。
リオンは俺を守るため、師であるクロスⅦを殺した。
俺に会うまでは『世界の全て』であったであろう彼を。
「…………あの……クロスⅦは……儀式の供物を貯蔵するための氷室に隠しました……遺体を痛めたくはなかったので……。
氷室の氷は、魔獣の力を借りて作ったものですから……術師であるクロスⅦが亡くなっても溶けることはありません……。
それで……よろしかったでしょうか……?」
リオンが涙でつまりながらも、細々と答えた。
「よし。上出来だ。
クロスⅦはどうやって食事の受け取りをしていたか、分かるか?」
「はい。食事のトレーは……地下神殿の奥にある暗い小部屋の天井の穴から1日に一度だけ、まとめて吊り下げられ……受け渡されます……」
「それ以外は、外部との接触はないか?」
リオンは「はい」と答え、小さく頷いた。
「……クロス神官と接触出来るのは、王お一人のみです。
それも、年に数回だけ……めったにいらっしゃいません。
地下神殿から出ることはクロスⅦも出来ないようで……こちらから王と接触を取りたい時は、回収される食事のトレーに白紙を置くことになっているようです……」
俺はリオンの言葉を元に、今後どうするべきかを考えた。
でも、どのように考えようと、結論は一つだけ。
「よく聞けリオン。俺はお前を国外に逃がす。
クロスⅦの死は当分は隠せるが、見つかればお前の身が危うい。
いや……俺も行こう。こんな狂った国、もう御免だ!!」
「……そ、そんな……そんな恐ろしい事……」
俺は、青ざめて震え上がるリオンを抱きしめた。強く。強く。
「俺と外で暮らすのは、嫌か?」
「……嫌なわけ、無いです。僕は兄様さえいれば……。
でも、僕はここから出たことが無いし、お外は恐ろしい所だと聞いているので、とても怖いです」
リオンは腕の中で、ガタガタと震え続けた。
「怖くなんか無いさ。外はきれいで素晴らしいぞ!
それに、もし怖い目に遭ったとしても、俺が絶対にお前を守ってやる。
実はもう、脱出ルートを作ってあるんだ。お前と暮す隠れ家もとっくに用意した。
……ただ、すぐにとはいかない。1週間待ってくれ」
俺は、抱きしめる腕に更に力を込めた。
「……兄様。僕は、いつまでだって待っています」
そう言ってリオンは、かすかにだが微笑んだ。




