表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
269/451

リオン編   死神5

 到着した僕らは、いつものように敷地に忍び込み、いつものように出会う敵を皆殺しにしながら進んだ。


 なんだ。

 敷地こそ広大だけど、簡単じゃないか。

 王が何を心配しているのか、僕にはよくわからなかった。


 隊員を指揮するのは相変わらず苦手だけど、今はそれなりに慣れた。

 奴等は僕のことを嫌っていたが、それでも命は惜しかったらしく、ちゃんと指示には従ってくれる。


 うん。言うことさえ聞いてくれるなら、僕だって隊員を守りやすい。

 こんな奴らでも自国の民だし、この仕事をずっと任せてもらい続けるためにも、隊員の安全はちゃんと確保しなきゃね。


 戦闘力の低い隊員たちを守りつつ戦ううち、いつのまにか僕らは中庭に誘導された。

 周りを囲む建物の窓には、ずらっと長弓隊が並んでいる。


 えっ……。


 今までは、こんな事はなかった。

 相手の獲物はたいてい剣で、僕の魔剣の足元にも及ばない。数が多くていちいち相手するのが面倒なときは、魔炎で焼けばいい。

 

 でも今、敵がいる位置は僕が得意とする炎術をもってしても、届かない。

 せめてあと二年後だったら、僕の魔炎は届いたろうが、今の僕では無理だ。


 射程距離を測られていた。

 そう気づいたときは、もう遅かった。


 周りにいた隊員達は、僕に罵詈雑言を浴びせはじめた。

 窮地に陥ったのは、僕のせいだと言うのだ。


 それでも僕は我慢した。

 僕は隊長。皆を守らねばならない。


 もしも隊員たちの大半を死なせるような無能な様を晒したら、きっと王に暗殺隊を降ろされる。

 そうなったら、次は兄がこの仕事を任されるだろう。


 僕は自分自身が負傷してまで、隊員たちを守った。

 自らの血で魔法陣を描き、広範囲に飛んでくる矢を次々と落とす。


 でも、そこまでだった。

 矢の数はあまりにも多く、反撃のすべも見つからない。

 このままではいずれ魔力もつき、全滅するだろう。


 アースラ様は僕に不死の体を与えてくださった。

 たとえここで殺されたとしても、僕だけはすぐに生き返るに違いない。


 けれど、もし……一度でも命を終えるようなことがあれば、きっと僕の体は『魔獣』に奪い取られる。

 

 冷や汗が伝った。

 それだけは避けねば。


 自分の体が自分でないものに奪い取られる恐怖は、多分味わったものにしかわからない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ