リオン編 死神5
到着した僕らは、いつものように敷地に忍び込み、いつものように出会う敵を皆殺しにしながら進んだ。
なんだ。
敷地こそ広大だけど、簡単じゃないか。
王が何を心配しているのか、僕にはよくわからなかった。
隊員を指揮するのは相変わらず苦手だけど、今はそれなりに慣れた。
奴等は僕のことを嫌っていたが、それでも命は惜しかったらしく、ちゃんと指示には従ってくれる。
うん。言うことさえ聞いてくれるなら、僕だって隊員を守りやすい。
こんな奴らでも自国の民だし、この仕事をずっと任せてもらい続けるためにも、隊員の安全はちゃんと確保しなきゃね。
戦闘力の低い隊員たちを守りつつ戦ううち、いつのまにか僕らは中庭に誘導された。
周りを囲む建物の窓には、ずらっと長弓隊が並んでいる。
えっ……。
今までは、こんな事はなかった。
相手の獲物はたいてい剣で、僕の魔剣の足元にも及ばない。数が多くていちいち相手するのが面倒なときは、魔炎で焼けばいい。
でも今、敵がいる位置は僕が得意とする炎術をもってしても、届かない。
せめてあと二年後だったら、僕の魔炎は届いたろうが、今の僕では無理だ。
射程距離を測られていた。
そう気づいたときは、もう遅かった。
周りにいた隊員達は、僕に罵詈雑言を浴びせはじめた。
窮地に陥ったのは、僕のせいだと言うのだ。
それでも僕は我慢した。
僕は隊長。皆を守らねばならない。
もしも隊員たちの大半を死なせるような無能な様を晒したら、きっと王に暗殺隊を降ろされる。
そうなったら、次は兄がこの仕事を任されるだろう。
僕は自分自身が負傷してまで、隊員たちを守った。
自らの血で魔法陣を描き、広範囲に飛んでくる矢を次々と落とす。
でも、そこまでだった。
矢の数はあまりにも多く、反撃のすべも見つからない。
このままではいずれ魔力もつき、全滅するだろう。
アースラ様は僕に不死の体を与えてくださった。
たとえここで殺されたとしても、僕だけはすぐに生き返るに違いない。
けれど、もし……一度でも命を終えるようなことがあれば、きっと僕の体は『魔獣』に奪い取られる。
冷や汗が伝った。
それだけは避けねば。
自分の体が自分でないものに奪い取られる恐怖は、多分味わったものにしかわからない。




