リオン編 死神3
敵の軍を殲滅してきたアースラ様やシヴァ王様は、後世まで『英雄』と称えられた。
殺した数は一度に何万単位で、僕の比ではない。
僕のやり方は偉大なるアースラ様の教本を元としている。
後に禍根を残さないよう、利用できる敵以外は必ず殲滅したし、施設は二度と使えないよう焼いた。
アルフレッド王もそれでいいとおっしゃっている。
何も問題は無いはずだ。
それに僕にだって、敵に対する情けが全く無かったわけじゃない。
残酷な扱いなどは一切した覚えが無い。
敵といえど無用な痛みを与えないよう、必ず一撃で止めを刺してきたし、僕の使う魔炎も自然界のものに比べればずっと温度が高いため、すぐに死ねる。
アースラ様もこうやって、敵に情けをかけてきたと伝わっている。
そうして高潔なる英雄として、民に慕われてきた。
……多分時代が違うのだろう。
魔法が当たり前だった昔と違い、今はそれらはすたれ、邪悪なものとされている。
そのせいか、隊員たちは僕が魔術を使うととても恐れる。
兄様は知らないだろうけど、暗殺の任を受けてから、僕には色々なことがあった。
王は僕に色々配慮して下さったけど、皆の陰口までは止められない。
子供の癖に生意気だとか、魔術を使うなんて気持ち悪いとか言われて、陰で散々足を引っ張られた。
でも僕は、兄さんのお役に立つべく日々頑張った。
それがアースラ様が姿をお見せくださったときの言葉にも、きっとつながる。
「お前が幸せを感じるような国を造れたなら、お前の罪は許されるだろう」
……でも、僕が幸せを感じる国ってなんだろう?
いろいろ考えてはみたが、答えはやっぱりひとつだった。
『兄さんがいつも笑っていられるところ』
僕が理想の国に望むのは、それだけだ。
だから、昔住んでいた、エルシオンのような国がいい。
ひっそりと地下神殿に住んで、昔のように国のために祈り、兄さんの訪れを心待ちにする……あの…………幸せだったころに帰りたい。




