リオン編 分かれ道4
机の上に地図が広げてあったので掴み、穴の空いた壁から下に飛び降りる。
風をまとっているので、普通の人間のように怪我をすることはない。
僕の名を叫ぶ、王の声が聞こえた。
でも急いでいるので、聞こえないフリをした。
どうせ止めようとするに決まっているし、今止められたら兄さんに危険が及ぶ。
それに、修理代を請求されてもすぐには払えそうも無い。
一括は無理そうだから、分割払いかなぁ?
店のお客さんにも時々分割払いを希望する方がいたけれど、中々大変そうだった。
しかも逃げ得など、王は絶対に許さない。
悶々と考えながら、夜の街を走り続ける。
え~っと、僕のお給金が月に約20万YEENだから、2割の4万YEENずつ払うとして……うう、いったい何十年かかるのだろうか?
考えながらも、時々地図をチェックする。
幸い敵のボスが泊まっているというホテルの近くまでは、兄と遊びに行ったことがある。
地図だって、昔は上手く読めなかったけど、今はちゃんと読める。
2時間ほど走ってたどり着いたホテルは、堅牢そうな石造りの建物だった。
でも地下神殿の壁と違い、何の魔的処理もしていない。
これなら壊すのは、造作も無いことだ。
ただ僕は、うっかり大切なことを忘れていた。
もうっ!
僕のウッカリさん!!
……なんて馬鹿アリシアみたいに、一人ツッコミを入れている場合ではない。
作戦はすべて聞いていたが、聞いてるだけだったので『ボスの顔』がわからない。
ううっ。
なんで僕はこう、肝心なところが抜けているのだろうか?
一人静かに落ち込んでみる。
こんなだから、兄やアルフレッド王は心配して僕に『大切な仕事』を任せてくれないのかなぁ?
あの暗殺者たちは、僕を笑ったのかなぁ?
……でもまぁいいや。
ボスの顔なんてわからなくても、この任務は果たすことが出来る。
どうせこのホテルには『敵側の人間』しか居ないのだ。
一人残らず抹殺すれば、その中にボスも居るに違いない。
 




