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リオン編   分かれ道3☆

 僕は、また首をかしげた。


 敵を殺すのに『一瞬もためらわない』なんて、当たり前のことだ。

 僕はためらったりしないし、やられたりもしない。

 

 普段は論理的な王までもが、わけのわからないことを言う。

 そういうことなら、なおのこと『兄』ではなく『僕』にやらせて欲しいのに。


 でもまあ、王たちの言わんとすることについては何となく察しがついた。

 2年も『外の世界』で暮らしてきたのだ。

 僕だって、そのぐらいのことは察せられる。

 

「わかりました。王は僕の力不足を心配しておいでなのですね。

 そして他の皆さんは、僕の力を見るために僕と勝負をしたい。そういうことなのですね?」


 見回しながら言う僕に、男たちは薄く笑いながら同意した。


 よし、読み通り!!

 アリシアには散々バカにされてたけど、僕の『察する能力』も中々捨てたものでは無いようだ。

 ちょっと嬉しくなる。


「では、時間が無いので遠慮なくいかせていただきます」


 悪いとは思ったけど、言い終えると同時に笑っていた奴らを風圧で吹き飛ばした……つもりだった。


 なのに、思ったより、うんと大技になってしまった。


 僕としては、ちょびっとだけ魔力を使ったつもりだった。

 それはもう、ほんの、ちょびっとだけ。

 兄の闘技の対戦魔道士でも使えるような、弱い術で奴らを脅かせれば十分だった。


 なのに、これはいったいどういう事だろう。

 そうか……誕生日!!

 誕生日ごとに自動的に解ける封印によって、僕のパワーはビックリするほど上がっていた。

 風圧で人を吹き飛ばすだけの予定だったのに、壁に大穴まで空けてしまった……。


 王も放心したように穴を見つめていたが、僕もポカンと口を開けて穴を凝視していた。


 どうしよう!


 どうしよう!


 いったい修理代はいくらなのだろう!!


 倒れている人間の方は、王お抱えの治癒師が治してくれるだろう。

 彼は月給制のはずなので、追加の経費とかは要らないに違いない。


 けれど、壁の方はそうはいかない。

 思い出すのは、王命で『城壁』の修理を手伝ったときのこと。


 レンガは現金一括払いで大量購入したため、格安だったと聞いていた。

 それでも一個480YEENほどしていたはず。

 

 指導に来ていた職人さんは、シルバーセンターから格安で派遣されてきていたベテランの老人だった。

 しかし日給は、それでも8000YEENだったと記憶している。


 王の私室の壁なら、城壁に使うレンガより高いに違いない。

 職人さんも、一線を退いたシルバーセンターの人では間に合わないかもしれない。


 いったい修理代にいくらかかるのだろう?


 王の性格なら、絶対にあとから請求が来る。

 必ず来る。間違いない。

 そして、取りっぱぐれることは決してない。


 こんなことなら、ちゃんと貯金をしておけば良かった!!

 僕の馬鹿馬鹿っ!!


 それに魔術をこっそり使ったこと、それによって暗殺隊の皆さんに怪我までさせちゃった事、きっと後で兄さんに怒られる。


 素手での戦いでは手加減ができるようになっていた。

 その事に気を良くしていた僕だけど、サボりにサボった『魔道』の方の手加減は、サッパリだった。


 こんなことなら、ちゃんと修行をしておけばよかった。

 兄の写真集をうっとりと眺めている場合ではなかった。

 本当にどうしよう。


 でも、やってしまったことはもう、しょうがない。


 隊員が怪我して動けなければ、兄が目覚めたとしても人員不足で出発できないだろう。

 丁度いいかもしれない。


 怪我と言っても、効果線上からはずしているから、せいぜい骨が折れたぐらいだろうし。


「アルフレッド王。早く治癒師を呼んで下さいね」


 放心している王に声をかける。


 たいした怪我ではなさそうだから大丈夫だとは思うけど、それでも人間の体は脆いから、早く治癒師に見せたほうがいい。


 僕だって、自国民を殺したいわけじゃない。





  

アリシアのイラストを五十鈴りく様よりいただきました♪

可愛い~☆

ありがとうございます!!


挿絵(By みてみん)

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