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リオン編   救い5

 魔獣が動じる気配が伝わってきた。

『僕への縛』が破れるとは、思ってもいなかったのだろう。


 しかし、クロス神官は300年間魔獣を封じてきた。

 その末である僕は、まだ半人前ではあるが、術のかけ方を工夫することでいくらかを補うことが出来る。


「兄様、今ですッ!! 僕の言う『呪文』を唱えて下さい!!」 


 取り戻した体で、必死に叫ぶ。


 仮継承しか済ませていない身ではあるが、僕だって魔道神官の端くれ。

 持てる知識の全てをつぎ込んで、今の力でも使える術を組み合わせていく。


 理論上は、これでも大丈夫なはず。


 魔縛の下準備として、不完全ながらも魔獣との融合を果たした。

 これが一番の難関だったが、元々魔獣の魂となじみやすく育てられたせいか上手くいった。


 後は兄様を『主人』に固定して、魔獣を縛るだけ。


 通常の状態では、魔獣を縛することは『人』には不可能。

 でも、僕と魔獣の魂を繋ぐことでそれは可能となる。


 魔獣が望まなくとも僕が望めば、簡単な契約呪文で魔獣を兄様の奴隷とすることが出来るのだ。


 それは僕が兄様に隷属することをも意味する。


 でも僕は元々そういう存在だ。

 大好きな兄様のために祈りを捧げ、戦い続けることこそが僕の本意。


 僕がお教えした呪文を兄様が唱える。


 潜在的な強い魔力の持ち主であれば、魔道を極めておらずとも発動する、簡単かつ絶対的なアースラ様の呪文。


 それは――――正統後継者だけが使える『王の呪文』


「アウラデッド・アースラ・キリク!!」


 アースラ様の名を織り込んだその呪文に、魔獣が苦しみもがく。


 成功だ。


 後は主人格を僕に固定して、魔獣の力を縛りこむ。

 次に兄様に絶対に逆らえないよう、魔獣の魂の一部に傷をつける。


 魔道書の一文ずつを思い出しながら、必死で呪文を組み立てていった。


『なめるな、餓鬼がァ!!!!!』


 頭の中で、制圧したはずの魔獣の声が響く。


 9割までかかった魔縛が、あっというまに青い炎に焼かれていく。  

 想像以上だ、魔獣の力は。



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