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リオン編   救い4

 目の前に、まばゆい光と共に一人の銀髪の神官が現れた。

 神書に絵描かれたよりずっと年老いた……けれどクロスⅦとも少し面差しの似た、威厳にあふれたそのお姿。


 僕にはすぐにわかった。

 この方は僕らの祖。

 ずっと憧れ、いつかはこのようになりたいと目指してきたクロス神官の祖、アースラ様が現れたのだ。

 

「……守れ」


 少ししわがれた、でも荘厳な声が響く。


「何と引換えてでもお前の王を守る覚悟があるのなら……お前とエルシドに不死の体を与える。お前の王を守れ。

 その先にお前が幸せを感じるような国を造れたなら、お前の罪は許されるだろう」


 凛としたものでありながら、どこか哀しげな瞳が僕を見た。


 そういえばクロスⅦから聞いたことがある。

 クロス神官は魔獣だけでなく、アースラ様が魔道保管した記憶体と力の一部を受け継ぐという事だった。


 普段それは表に出ることはなく、国家の大事の時のみ表層に出て道を示して下さるという。


 クロスⅦも、その前のクロスⅥもお姿を見たことは無かったらしい。

 でも不死化の魔道研究を進めながらも自身の不死化が叶わなかったアースラ様は、こういう形で死後も国や僕らを守って下さっているのだ。


 アースラ様のお姿を拝せたのは、ほんのわずかの時間でしかなかったが、僕に湧き出るような勇気を与えた。


 心を落ち着け、呪文を組み立てる。 


 基本の呪文だけでもその数は膨大。

 でも僕はすでに、全部習得している。


 ——————あとは応用だけ。


 本当は正式なクロス神官になるまでに時間をかけて覚えていくべきものだったが、教えて下さっていた師はもういない。


 なら、自分で考えるのだ。


 アースラ様はその尊きお姿を僕にお見せ下さった。

 そしてクロス神官の座を投げ出した僕に、再び使命と命を与えてくださった。


 出来る……きっと出来る!!!


 体がぎしぎしと悲鳴を上げたが、どうせ今の僕は精神体だ。

 かまわず祈りの精度を高めていく。

 

 魔獣の言いなりになって命を差し出そうとしている兄を助けられるのは、この僕しかいない。


 魂が砕けてもいい。

 兄様を助けられるなら、僕はどうなっても良い。


 体がバラバラになりそうな痛みをこらえて魔縛を引きちぎった。


「……駄目!! 兄様ッ!!」

 

 魔獣の手のひらにある青い炎に唇を寄せる兄様に、力の限り叫ぶ。

 そして兄の代わりに魔獣の魂を再び取り込んで、祈りの力で魔獣と僕の魂を融合させる。


 未熟な僕が今打てる手は、これぐらいしかない。


 前回は僕ごと魔獣を討とうとしたが、果たせなかった。

 結果、クロスⅦが施して下さった魔縛は『僕が命を落とすこと』で解け、魔獣に自由を与えてしまった。


 でも、今度は絶対に逃がさない。

 自身の力だけでもう一度魔縛を再構築し、必ず魔獣を捉えてみせる。


 僕は何と引き換えようと……兄様を守ると誓ったのだから。

 

 

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