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リオン編   救い2

 僕は頭が真っ白になった。

 偉大なるシヴァ様やアースラ様がおつくりになった『善なる王国』が滅んだ?


 まさか……。


 もしや僕が闇に堕ちている間に、この魔獣が滅ぼしたのだろうか?

 奴には、それだけの力がある。


 だとすると、師が生涯をかけて守った現王も、可愛い僕の妹姫も、きっと死んでしまったに違いない。


 敬愛する父様……そしてたった一度だけこの腕に抱いた、小さく温かだったあの妹もクロスⅦのような硬く冷たい骸となってしまったのだ。


 遠い地にいるとはいえ、あの二人の幸せを、善良なる王国臣民たちの幸せを僕はずっと祈り続けていた。

 とても大切だと思っていた。


 でも、僕の想いは届かなかった。


 これもきっと、僕がしたことの報いなのだろう。


『クロス神官は一切の私欲を捨て、王と国のために、ただ心からの祈りを捧げなければならない』


 そう、厳しく戒められていたのに、僕は自分自身の幸せを求めてしまった。

 禁を犯してまで兄と会って話す、楽しいひと時を選んでしまった。


 そのために兄は師に殺されそうになり――――結果として僕が師を殺してしまった。


 今、魔獣は僕の未熟さに付け込んできている。


 僕があのまま分不相応な望みを抱かず、規則通り神殿内でクロスⅦと暮らしていたなら……たとえ僕の身に何かあったとしても、クロスⅦが魔獣を魔縛して下さったに違いない。


 やはり僕は、何も望んではいけなかったのだ。

 あの地を離れるべきではなかったのだ。


 魔獣は僕をあざ笑うかのように、( あるじ)たる僕の体を意のままに使うと宣言した。

 

 でも、僕の体は僕のものだ。

 たとえ国が滅びたとしても、僕は『僕の王』である兄様に仕えるためにだけに存在する。


 たとえ死すとも、汚き魔獣などに体を渡してたまるものか。

 

 必死で体を動かそうと試みた。

 魔獣の縛を解こうと、力の限りあがいた。


 しかし、どんなにあがこうと指一本動くことは無い。


 これが魔獣の力……。

 かつてアレス帝国を焦土と化し、今またエルシオン王国を滅ぼした魔獣の力なのか。


「待て!

 ……その体を持っていかないでくれ!! お願いだ!!」


 兄様の悲痛な声が響いた。


 え……。


 魔縛された体はまったく動かなかったが、そのかわり、魔獣の目を通してぼんやりと兄様の姿が見えるようになった。

 去ろうとする魔獣の体に、兄様は必死で取りすがっている。


 ああ、兄様はちゃんとわかって下さっている。

 僕と魔獣が『まったく違う存在』なのだということに。


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