2・王家の秘密
そういう実態がわかるようになると、300年間見事に国を治めてきた歴代の王たちは確かに偉大と言える。
また、歴代の王たちは『自分のためだけの贅沢』などはしなかった。
他国の王のように、何人もの妃を娶ることもない。
俺は王子だが、リオンのように洗濯まで自分でする事はないにしても、身の回りのことは全て自分自身でする。
着替えも、入浴も、自室の整理も、剣の手入れも……すべて。
それは俺が王になっても変わることはないだろうし、娶る妃も選びに選んだ一人だけだ。
もちろん例外はある。
跡継ぎだけは何が何でも確保せねばならないので、もしもの時は父と同じように、こっそりと妾妃を迎えることになるだろう。
歴代の王たちは『呪い』を信じて始祖王の定めた、古めかしい法律に従っていたわけではなかったはずだ。
今の世でも十分尊重に値するから従っていた。
ただ、それだけなのだということが、今の歳になって、やっと俺にもわかるようになった。
父の弟は幼くして事故死している。
俺に跡継ぎがなかったら、王家の血は絶えてしまうだろう。そうすれば国は乱れるに違いない。
多くの者が内乱、もしくは外圧に巻き込まれ、死ぬかも知れない。
昔はただただ憤って父上を軽蔑したが、今なら……母上に申し訳ないながら、妾妃を迎えることは正当な行為だったと理解できる。
父の妾妃は、子をなすまでは城内に密かに住まわされていたらしい。
エドワードは、一度だけその女性を見たそうだ。
真っ白い雪を思わせる、可憐かつ、凄い美人だったと言っていた。
まぁ、リオンを見ればそれは容易に納得できる。
もしかしたらその人は、母上をしのぐほどの美しさだったかもしれない。
ただ、彼女の存在は完全に隠されており、食事係が通うだけの寂しい暮らしぶりだったという。
その女性は亡くなって久しいらしいが、リオンが生きて地下に幽閉されていたのだから、母親の方も生きている可能性はある。そう思い探したが、結局見つからなかった 。
考えたくは無いが、実子のリオンに対してさえあの仕打ちなのだから、妹姫ヴィアリリスの生まれた今となっては、その女性は始末されたのかもしれない。
リオン自身は、母親について何も知らなかった。
生まれてすぐに引き離されたらしく『母』という言葉さえ知らないのだから、それ以上聞きようも無い。
深く説明して、リオンを傷つけるのもはばかられた。
それからも俺は、様々な事を調べた。
悪いとは思ったけれど、母が離宮に療養に行っている間に、母上の部屋まで調べた。
若い頃の父上が母上に当てたと思われるラブレターの束を、ベットの2重引き出しから見つけた時には思わず笑ってしまったが、笑えないものも発見した。
母上の昔の日記帳だ。
そこにはこう書かれていた。