表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
206/451

リオン編   異変4

 そのまま兄様は目覚めなかった。

 呼吸を確かめ、脈を取る。異常はない。外傷も無い。


 揺さぶってみたが、反応は返らなかった。

 名前を呼んでもやはり同じ。


 いったいどうしたらいいのかもわからず、ただ兄様を抱きしめて泣いていた。

 それでも兄様は目覚めない。


 いつものように、優しく頭を撫でてほしいのに。

 あの温かい瞳で僕を見て欲しいのに。

 

 僕は治癒魔法は使えない。

 魔獣の力を使って術を展開するクロス神官は、基本魔獣と相性の良い術しか教わらないし、使えない。


 使えたとしても、兄様に外傷は全くない。


 どうしたら兄が目覚めるのかなんて、僕にはわからなかった。


 

 そうして途方にくれているうちに、一人の『すかあと』をはいた人が声をかけてくれた。

 野菜の育て方を教えてくれた、僕と仲良しの優しい花屋のお姉さんだ。


 お姉さんも泣いていた。

 泣きながら僕を抱きしめてくれた。


「可哀想に」って。


 お姉さんの傍にいたお兄さんが、黙って僕の兄様を背負ってくれた。


 ついて行った先の家に入ると、部屋の隅でお互いをかばうように折り重なって死んでいる親子四人の亡骸が目に入った。


 子供二人は僕と兄様ぐらいの年だ。


「私のお母さんとお父さん。それに弟たちよ。皆殺されちゃった……。

 だから服もベットも使って。だってもう……」


 お姉さんは泣き崩れた。

 その時、家の外で大きな物音がした。


 お兄さんは剣を持って、僕らにここに隠れているよういい含めて飛び出していった。

 でもそのまま帰ってこなかった。


 お兄さんの様子を見に行ったお姉さんも、帰っては来なかった。

 魔力を使い、耳を澄ませていれば、お兄さんの様子もお姉さんの様子も知ることが出来たはずなのに、心が乱れて上手く術を使うことが出来なかった。


 僕たちは捨てられてしまったのだろうか?

 それとも、二人ともどこかで殺されてしまったのだろうか?


 どちらにせよ、ここで戦えるのは僕一人。僕が兄様を守らなくては。


 僕は眠ることもなく、ずっと兄様の傍らで守り続けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ