表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
205/451

リオン編   異変3

 叫び声を上げてうずくまる兵士に気を取られている兄様の後ろから、別の兵士が襲い掛かった。

 あれは兄様に避けられる距離ではない。


 僕は一息に距離を詰め、兵士の首を切り落とした。

 お優しいアースラ様の『お教え』の通りに。


 気高きアースラ様のご遺文は、クロス神官を降りた僕であっても絶対に守らねばならない。

 たとえ虫のごときアレス兵相手であってもだ。


 一撃で殺すなら、首を落とすか心臓をつぶすのが一番適している。


 僕は、品性のかけらも無い顔のついている首を落とすほうを選んだ。

 あっても仕方ないと思ったからだ。


 吹き上がる血飛沫の向こうに、兄様のお姿が見えた。

 やっぱり兄様はお美しいなぁ。こんな時でさえそう思う。


 しかし兄様は、まだ動こうとしない。

 敵兵たちが迫ってきているというのに。


 そこで僕はエラジーをひらめかせ、訓練の的を突くときの動きを思い出しながら人体の急所を次々と突き刺し、6人の兵士を殺した。

 目隠しをしたまま狼たちを相手にすることを思えば、さしたる敵ではない。


 でも、それだけでは終わらない。

 僕の戦いを見た他の兵士たちが、数十人の単位で押し寄せてきたのだ。


 さすがにこれだけの数の敵を相手としたことはない。

 でも兄様を守るためなのだから、怯んだりしてはいけない。


 僕はすっと背筋を伸ばし、多人数を相手にするのに最も効率的な構えを取った。


 それからのことは、よくわからない。

 なぜこうなったのかも、わからない。


 覚えているのは、悪夢のような光景。


 すべての敵を切り伏せて……僕は兄様に手を差し伸べた。

 きっと褒めて下さるだろうと信じて。


 それなのに、兄様は僕の手を振り払った。

 そして、ただ一言、

 

「 離せ 」


 …………とおっしゃたのだ。


 兄様はまるで『化け物』でも見たかのような顔をして僕を見た。

 胸がズキンと痛んだが、問いかける事は出来なかった。

 新たな敵兵が現れたのだ。


 僕はまた戦った。

 兄様を守るために。兄様に褒めていただくために。


 でも兄様は、褒めては下さらなかった。

 ただ獣のように咆哮をあげ、そのまま意識を手放した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ