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リオン編   鳥籠の外4

 外での僕は『馬鹿丸出し』だったけど、家の中では頑張った。


 綺麗好きのクロスⅦにガッチリ仕込まれていたので、掃き掃除も拭き掃除も……あと洗濯も兄様よりは上手い。(はず)

 

 料理は兄様と一緒に、里のおばさんたちや花屋のお姉さんに習った。


 最初は二人して失敗ばかり。

 一緒にアワアワしながら作っていたけれど、僕は元々刃物を使うことに慣れていたし、兄様は味の調節がうまかった。


 一月もたつと、里で食事を買ったり分けてもらわなくても困らない程度にはなった。


 その頃にはもう、ぬいぐるみの存在を忘れていた。


 外には心躍るものがたくさんあったし、兄様がいつも一緒にいてくださる。


 誕生日には二人で『けぇき』を焼いて食べた。

 ちょっと焦げたけど、とても美味しかった。


 綺麗なお花も頂いた。


 兄様は『僕が一番好きな花』の種類をちゃんと覚えていて下さって、抱えきれないほど大きなハイドロレンジアの花束を下さった。


 ……前に摘んだハイドロレインジアが、まだ花瓶で咲いているんだけどね。

 今度はどこに飾ろうかなぁ?


 ああ、僕はなんて幸せなのだろう。


 時々クロスⅦのことを思い出して胸が痛むけれど、あの方が神の愛に抱かれて天国で幸せに暮らせるよう、毎日こっそりと祈り続けた。


 そうするうちに、僕は夢を見た。

 ふと視線を感じて振り向くと、そこには長い銀の髪をひらめかせた美しい師の姿。


 夢の中のクロスⅦは、にっこりと僕に微笑みかけてらっしゃった。

 そうして兄様のように僕の頭に手を乗せて「幸せにおなり」とおっしゃった後、天に昇って行かれたのだ。


 それは、もちろんただの夢。

 許されたいと思う心が見せた、都合の良い夢だったのだろう。


 けれど…………あの方は、王の次に大切なのは『僕』だとおっしゃっていた。


 もちろんあの方の一番と二番では天地ほどの差があるけれど。

 それでももしかしたら『今の僕の幸せな様子』を見て喜んでくださっているのかもしれない。


 そんなことをふと思った。


 



 

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