リオン編 鳥籠の外3
僕の方から里の人たちに声をかけるのは、最初は無理だった。
だって、慣れてないし、とても恥ずかしい。
けれど皆は、そんな僕にいつも優しく声をかけてくれた。
そんな中、特に仲良くなったのが、花屋のお姉さんだ。
兄様に連れて行ってもらって、僕はよくそこでお花を買った。
仲良くなってからは店の裏にある栽培所から、直接お花を摘ませてもらうこともあった。
僕が一番好きなのは、ハイドレンジアというお花。
同じ種類だというのに色も形も様々で、とても興味深い。
兄様と一緒に一つ一つ吟味して摘むのはとても楽しかった。
花屋のお姉さんは兄様やクロスⅦみたいにキレイな人ではなかったけれど、とても優しい。
時には兄様のように、僕の頭をなでて下さることもあった。
お姉さんには仲良しのお兄さんもいる。
お兄さんは隣の村出身だけど、お姉さん同様、スミコミで花屋さんで働いている。
もうすぐ二人は『ケッコン』するんだって。
『ケッコン』って何?
……って聞いたら、くすっと笑って教えてくれなかった。
いつもは何でも教えてくれるのに、何でかなぁ?
でもとても楽しそうだったから、きっといいものなのだと思う。
お姉さんとお兄さんは、僕ら兄弟に野菜の作り方も教えてくれた。
僕は地下神殿で育ったので、兄様に連れ出されるまで土を見たことがなかった。
硬い土は、耕すとふわふわになる。
そこに命の詰まった種をまくと、小さな芽が出てくる。
僕はすごくビックリしたけど、土の中から懸命に葉を伸ばすさまを見たら……何故か心が温かくなった。




