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1・王家の秘密

 異母弟リオンと出会って、約1年の時が過ぎた。


 でも弟は相変わらず小柄で華奢で、女の子みたいに見える。

 純白の神官服をひらめかして駆けてくる様子はとても愛らしく、見合い相手の姫たちの千倍は麗しい。


 リオンは10歳で仮継承の儀式をし、クロスⅧという名を貰ったようだ。

 しかし俺は、その名で呼ぶ気にはなれない。


 リオンは俺の弟なのだ。

 そんな冷たい、形式的な官職名で呼ぶ気になどなれなくて当然だろう。


 俺はリオンに会う以外の時間は極力勉強し、真剣に武道を学んだ。

 おかげで『始祖王の再来』と周りから囁かれるようにさえなり、あれほど口うるさかったエドワードも俺に全幅の信頼を置いてくれ、監視の目も緩まってきた。


 父から与えられる以外の友人も、積極的に作った。

 いざという時、王である父にではなく『俺』に力を貸してくれる友を……そして部下が必要なのだ。


 もしもリオンの身に差し迫った危機が訪れた時には、速やかに城外に逃がせるような手はずも整えておかねば。

 幼い頃から10人以上の専属教師によって英才教育を叩き込まれてきたのは、ダテではない。


 12歳とはいえ、普通の学生が学ぶような範囲は全て学び終えた。

 雑学好きな歴史の先生から、貴族が逃走するときのそういう知識も手に入れておいた。


 俺が絶対の権力を握る時期は、まだ遠い。

 それまで、日々真剣に学ぶことが俺にできる全てだ。


 俺はいろいろなことを、時間をかけて整えていった。


 父王には何も気づかない振りをして接しながら政策を学び、外交のために国外に行くときは、出来るだけついて行った。

 いざというときが来たら、国外も視野に入れてリオンを逃がさなくては。

 だから、この目で候補地をよく見ておくのだ。


 実は、俺が国外に出られるようになったのはごく最近の話だ。

 治安の悪い外国で『たった一人の世継ぎ』に何かあってはいけないという配慮から、俺は国外に行くことは許されていなかった。


 しかし妹が生まれたとなれば別だ。それはむしろ推奨された。

 王になれば他国とも付き合っていかねばならないのだから、当然だろう。


 国外に行くのは楽しみでもあったが、やはりどの国も噂通り、わが国よりは著しく劣っている。

 いくつか良さそうな国もあったけれど、酷い国の方が圧倒的に多い。


 西側の隣国ルクラードは比較的大国だが、美しいのは城とその周辺だけ。

 奴隷制度もまだ残っているし、殺人などの重大犯罪は少ないものの、盗人など軽犯罪者は多い。


 東隣のシリウス国は他国との交易が盛んで活気があったが、そこでも多くの奴隷が鞭打たれていて、とても可哀想だった。


 わが国では、健康な者は皆、真面目に働く。

 病気や老齢で働けない者にはそれなりの社会保障があるので、食べていけないということはまずない。


 奴隷制度も建国当時からなかった。


 天災などは他国と変わらずあるが、そうなれば国民たちはこぞって寄付を差し出す。

 もちろん国からも被災地に援助はするが、ほとんどの場合は民衆からの寄付だけで事足りる。


 だから他国のように、危機に備えて莫大な資金や物資を溜め込む必要がない。

 その分だけ他国より、税も軽い。


 また、兵役の負担も他国とは比べ物にならないぐらい軽い。


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