表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
197/451

リオン編   決別3

 僕は兄を守るために、師であるクロスⅦを討ってしまった。

 とても悲しいが、後悔はない。


 クロスⅦがそうだったように、僕は『僕の王』を守ることだけを教わってきたのだから。


 ううん違う。多分そうじゃなくて、王だとかそういうことに関係なく、僕はただ『兄様』を守りたかったのだ。



 しばらく座り込んだあと、僕はクロスⅦを儀式の供物……つまり血を抜き取られた狼たちの死体を一時的に貯蔵しておくための氷室に運んだ。


 周りは零下の気温。

 すぐにこの方の体は凍り付いてしまうだろう。


 その前に、クロスⅦの顔をぬぐって美しく清め、腕を祈りの形に組んだ。

 葬儀を行うためだ。

 神官である僕は、葬儀の執り行い方もすでに習っていた。


 外の世界に出ることのない僕らだけど、先代のクロス神官が亡くなった時は葬儀を執り行い、その魂を天に送る。

 参列者は次世代のクロス神官のみ。


 『外』の世界では大勢の人たちが集まり、その死を悼むと兄様からお聞きしたけれど、この地下神殿には『人』は僕と師しかいない。


 だから、僕が百人分悼むことにした。


 定められた手順に従って、力ある言葉を唱えていく。

 どうぞ師が安らかに眠れますように……そう心から願いつつ祈りを捧げる。


 この儀の執り行い方を習ったのは、ほんの半月前。

 そのときは、こんなに早くその機会が来るなんて、夢にも思っていなかった。


 目の前の師に改めて顔を向ける。

 そうしたって、僕は目隠しをしているので見えるわけではないけれど。


 クロスⅦは、とても美しい方だった。


 長い銀髪をひらめかせて姿勢正しく歩く姿は、神書に出てくる絵画のようであり、僕はクロスⅦの美しい姿を見るのが大好きだった。


 今だって、きっととても美しいままに違いない。


 でも、僕はもう二度と……この方が生きて動く姿を見ることはない。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ