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滅びの国の王子と魔獣 本編+外伝13作 最終外伝『だから、幸せに』完結  作者: 結城 
リオン編   壊れた国の少年(外伝となります)
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リオン編   壊れた国の少年5

 絶望したそのとき、兄の腕が僕を包んだ。


 強く。強く。


 びっくりして見上げると、ぽたぽたと温かい液体が僕の顔にかかった。


 これは知っている。『涙』という液体だ。

 つらかったり、悲しかったりするときに、生体反応として目からこぼれる液体。


 それが『涙』


 ――――やっぱり馬鹿だと思われたのだ。

 どうしようもない、役立たずのクズだと思われたのだ。


 王を補佐するべきクロス神官候補生は、国民の中で『最も優秀』でなければならない。


 それが、こんな『とてつもない馬鹿』だとわかってしまったのだ。


 そりゃ涙もこぼれるよね。絶望のどん底に落ちるよね……。


 でも、兄の腕の中はとても暖かだった。

 とくんとくんと音が聞こえる。

 あれは位置から推測すると、多分心臓の音。


 心臓は命を繋ぐのにとても大切な器官で、仕留めた狼の心音を確かめることなら何度かあった。


 でも、生きている人の奏でる心音は、何と心地が良いのだろう。


 こうやって間近で聞くのは初めてのはずなのに、なぜかとても懐かしい。

 頭がぼぉっと霞んでくるような、不思議な気分になるのだ。


「あの……兄様って……とても暖かいのですね。

 僕も兄様に、……ぎゅっとしてもいいですか……?」


 気がつくと僕は、世にも厚かましいことを口走っていた。


 でも兄様は嫌だろうな。

 こんな『馬鹿な弟』の事なんか、さっさと忘れてしまいたいんじゃないだろうか?


 不安と恥ずかしさに涙を浮かべたそのとき、ゆっくりと頷く気配がした。


 うそ……。

 僕なんかが兄様のことをぎゅってしていいの?


 僕不安だったけど、僕は恐る恐る兄に腕を伸ばした。



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