8.許し
俺はあまりの内容の告白に言葉を失った。
「ヴァティール様だってそうよ。
エルだって、本当はわかっているんじゃないの?
あの方は口は悪いけど、心は優しいわよ。
私が熱を出したときは……ずっと寝ないで看病して下さった。
額に置かれた手があんまり冷たくて、『ああこの方は本当に人間ではないんだ』って思ったけど……それでも嬉しさの方が勝ったわ。
エリス姫の事だって、誰が何を言おうとがんとして守った。
『アレス帝国が何をしようが、子供のエリスには関係の無い話だ』……って。
私は、あんな優しい方を見たことが無い。
ねえエル。
リオンはあの時死んだのよ。
あなたと国を守って死んだ。
呪いによって生き返るっていうのはわかったけど、そんな事は本当は『人間』にはあってはならないのよ。
だから、酷なようだけどもう諦めて。ね……?」
「……っリオンは死んでなんかいない……!!」
「死んだのよ!!」
「死んでない!! 死んでなんか……」
泣きたくないのに、涙があふれた。
否定しなくては。
リオンは生きている。
そう思うのに、心のどこかではアリシアの言葉を認める俺が居る。
『人間』ゆえにリオンは死んだのだ。
呪いから開放されたのだ。
あの地下神殿から出て以来、辛い目にばかり合ってきたリオン。
でも……もう弟は辛い目に合うことも、苦しい思いをすることも、俺のために人を殺すこともない。
それは残酷な形ではあったけれど、もしかしたら神がリオンに与えた『許し』なのかもしれない。
涙を流し続ける俺をアリシアは優しく抱きしめてくれた。