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6.許し

 リオンは一度目の死を俺の心無い言葉によって迎えた。


 二度目は俺を助けるために。

 そしてそれからは、ヴァティールによって何度も何度も殺されていた。


 奴は絶対に『リオンの体』を手放さない。

 もう、リオンが蘇る事はない。


 あの笑顔も、俺を呼ぶ甘い声も、何もかも永遠に失ったのだ。


 俺がやってきたことは、いったい何だったのだろう?

 これまで俺は、弟のためだけに頑張ってきた。


 城の地下から助けだし、外の世界に連れていき、共に喜び共に苦しみ、それでもその果てに幸せな未来があると信じてもがいてきた。


 でも俺にとっての『幸せな未来』とは『リオンが幸せに笑っている未来』の事だった。

 地下神殿に会いに行くたび見た、輝くような笑顔を永遠にしてあげたかった。

 ずっとずっと、見ていたかった。


 結局はそれこそが、俺を動かす原動力だったのだ。


 深く考え込んだその時、ギィ……と部屋のドアが開く音がした。

 振り返ってみるとアリシアが立っていた。


「……どうしたんだ? こんな夜中に……」


「うん。ヴァティール様が部屋にいらっしゃって起こされちゃった。

 部屋を替わって欲しいって……」


 アリシアは静かに言った。


「そうか……。

 ヴァティールは他に何か言ってなかったか?」


「……婚約者なら慰めてやれって言われたわ」


 アリシアはヴァティールが使っていたベットにそっと腰を下ろした。


「なあアリシア。俺はもうどうしてよいかわからない。

 本当にわからないんだ……」


 俺は呻くように言い、アリシアに隠していた事すべてを打ち明けた。


 元『エルシオンの王子』であること。

 祖国を滅ぼしてしまったこと。

 ヴァティールのこと。


 彼女に全てを知られたなら、もう俺には破滅の道しかない。

 あんなに俺を信じてくれた友・エドガーですら、俺のしたことを許しはしなかった。


 きっとアリシアも同じだ。

 私情にとらわれて一国を滅ぼした、愚かな俺を許しはしない。


 朝になれば俺がしてきたことは皆に広まり、忌まれ、この国を追われるだろう。

 それでも構わない。


 リオンを幸せに出来なかった俺など、もうどうなっても良いのだ。



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