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5.人質

 それからまた、月日が流れた。

 だがヴァティールは、アリシア同様にエリス姫をただ大切にしているだけで『例の作戦』とやらが何なのか、いまださっぱりわからない。


 うんと姫を可愛がって篭絡し、アレス帝国への刺客として送り返す……とかだろうか?

 でも、姫に剣術等を仕込んでいる様子はない。


 もしかしたらあの魔獣は、自分の言ったセリフ自体すっかり忘れているか、作戦が、修正不可能なほどに躓いているのではないだろうか?


 ありうる……。

 

 ありうるぞ、すごく……。



「う~ん、あのアレス帝国から来る皇女だから、もっと高慢ちきで鼻持ちならないヤな性格の姫だと思ったのに、これは計画が狂ったなァ……」


 例の計画とやらはどうなったのかを問いただすため、夜を待って自室で聞くと、ヴァティールからはこのような答えが返ってきた。


 思ったとおり、大雑把なヴァティールの計画は、初期から躓いているらしい。


「そろそろ話してくれてもいいんじゃないか?

 一体、お前の計画とはどういうものだったのだ……?」


 計画はもうすでに破綻しているようだが、それでも一応お義理的に聞いてみる。


「うむ。今は公になっていないようだが『アレス帝国の王位』は一族のうち最も強い魔力を持った者に継がせることになっていたのだ。

 湖に魔道士団を送り込んだのも、おそらく王自身かその血族だ」


「何っ!?」


「アレス帝国1代目の王は、魔道士上がりで糞アースラの同門だったのだよ。

 奴は糞アースラとほぼ同等の力を持つ魔道士だったが、糞アースラがワタシを捕らえ、魔力源として使い出してからは奴の足元にも及ばなくなった。

 おまけに糞アースラは最大の攻撃魔術、『リア』まで造りやがったしなァ」


「リア?」


「リオンが言うところの『善の結界』のことだ。

 ……なァにが善の結界だ。笑わせてくれる。

 アレは魔獣のワタシから見てもエゲツナイ術だ。アレを使って屈服させられない国なんてない。

 だからリオンの頭の中にもあるかと思って前回探ってみたんだが、正式な使い方は入っていなかった。さすがの糞アースラもエゲツナさ過ぎて伝承させられなかったのかなァ?

 ……まァそれはともかく、糞アースラに歯が立たなくなった初代アレス王はアースラに娘を所望され、和平と引き換えに受けた。

 ……今回みたいに娘を差し出して、和平を結ぶことでかろうじて生き残ったのさァ」


 ヴァティールは憎々しげに吐き捨てた。


 俺も元エルシオンの王子なので、国の歴史は徹底的に学ばされている。

 所々ヴァティールの言う話と合わない部分もあるが、概ねは正しい。





 

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