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2.人質

「ええ。ヴァティール殿、私はこの申し出を受けようと思っています」


 アルフレッド王は、ヴァティールにもアレス帝国から『和平の使者』がきたことを告げた。


「アレス帝国は憎き国。しかしこの度の戦いで我が国は極端に疲弊してしまいました。

 その度合いは正直に言うと、アレス帝国とは比較にならない程酷いものです。

 国の成人男子は戦前の半分以下になってしまいましたし、そもそも今の状態では観光商法での利益は全く見込めません。

 農産地も適切な時期に適切な手をかけられなかったり、主を失ったりで今年の収穫はほとんど見込めぬ状態です。

 このままでは我が国は急激に衰退していきます。

 今年度は同盟各国の援助で何とかやり過ごせますが、あまり援助に頼りすぎると他国から侮られるようになるのは時間の問題でしょう。

 和平を受け入れ、まずは国を立ち直らせるのが最も望ましいと私は考えています」


 苦渋の決断ではあろうが、確かにアルフレッド王の言うことは理にかなっている。

 

 かつて大魔道士アースラがしたようにヴァティールを連れ、アレス領土を攻める事も考えた。しかし当時と今とではそもそもの条件が違う。


 あの頃はアースラの妹であり、始祖王の妃でもあった魔道士リリーシャや複数の魔道神官が国を守り、アースラの不在をカバーしていた。

 国民の魔力を集める魔水晶を身に宿し、王妃や神官に魔力を供給できるシヴァ王もいた。


 しかし、今は魔水晶も無く、シヴァ王や王妃も居ない。

 そもそも、魔獣ヴァティールは『主人』である俺の言うことを全く聞かない。

 

 一方、アレス帝国には現在も魔力を探知できる術者がいる。

 兵を魔法移動することも出来る。

 攻めに入った瞬間、やられるのはガラ空きになったブルボア王国の方だろう。


「ヴァティール殿。この案、ご了承頂けるでしょうか?

 ……もちろん相手はあのアレス帝国。

 人質を得たとて和平を保てるのかという疑いはありますが、こちらにはヴァティール殿もいらっしゃる。

 数年ぐらいは和平条約も守られることでしょう」


 立ったまま報告する謙虚なアルフレッド王に対し、ヴァティールの方はドッカリと足を組んでソファーに座って偉そうに王を見上げている。


「なるほど、王よ。ワタシを当てにされるのは少々不快だが、まあいいだろう。

 ブルボアのためにアレス帝国を滅ぼすようなことはしないが、国内に居るだけで良いなら、そうしてやってもいい。

 オマエの事はけっこう気に入っているし、どのみちエルから遠くには離れられないからなァ。

 しかし、どの子供をもらうかはもっと返事を延ばしたほうがいい。

 こちらから密偵をはなち、それぞれの子供がどのような者なのかしっかり見定めてからでも遅くはないだろう」


 ヴァティールは珍しくもっともらしいことを言った。  

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