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3.人の心

 それから更に半月がたった。

 リオンはまだ、戻ってこない。


 俺以外の者にとっては日々が平和に過ぎ、


『もうアレス帝国は侵攻を諦めたのでは?』


 と誰もが思い始めた頃、異変は起こった。


「大変です、エル様!! 湖に巨大な魔法陣が現れました!!」


 顔色を失って飛び込んできた見張りの兵士を落ち着かせ、よく話を聞いてみる。


 最初はヴァティールのいたずらかと思っていたが、そうではない。

 魔法陣から約400名のアレス帝国魔道士団が現れたのだ。


 アレス帝国は奪略国家だ。

 しかし300年前『エルシオン戦』で敗北して以来、他国と戦う時に『魔法』を使用したという話は、聞いたことがない。

 というか、今のアレス帝国に、そのようなものは存在しない。


 エルシオン王国に負け、アースラの持ちかけた『取引』を飲んで以来、あの国には一人の魔道士もいないはずなのだ。


 しかし……今やアレスこそが戦勝国。

 エルシオン王国に敗れたのは300年も前の話で、ここ数十年は他国を侵略することに勤しんでいた。


 他国には、力は弱いものの、まだまだ魔道士が居て……それらを抱え、研究することは可能だろう。


 それにアレス帝国は、かつて我が国と何度も戦った相手だ。

 大魔道士アースラとも凄まじい魔術戦を繰り広げてきたと伝承に残っている。


 我が国に、アースラの技を継承してきたリオンのような存在がいるように、あちらにもそういう存在が秘密裏に存在して、魔道士団を育成していてもおかしくはない。


 そういえば、正体不明の商人が非公式に魔剣や魔道具を買いあさっていたのは、噂で聞いていた。

 べらぼうな値段の魔剣等を苦もなく買い取れるなら……バックについていたのは『アレス帝国』だった可能性は高い。


 それにしても、まさかあんな大規模な魔道士団まで隠し持っていたとは……。


 まずい。


 ヴァティールだけならともかく、あちらにはタイミング悪くアルフレッド王がヴァティールと話すために訪れている。

 もちろん、ヴァティール付きの侍女であるアリシアと下働きのウルフも。


 手加減というものを知らないヴァティールが、魔道士団と交戦したらとんでもないことになるに違いない。

 俺は馬を駆って湖の別荘にかけつけた。



「よう、エル!! 血相変えてどうした?」


 別荘の入り口には、機嫌よさそうな顔のヴァティールが立っていた。

 その隣にはアルフレッド王が。そしてアリシアとウルフが。


 ぐるりと見わたすが、辺りに取り立て変異はない。


「……無事だったのか、良かった。

 さっき見張りの兵から『湖に巨大な魔法陣が現れた』と聞いたのだが……」


「ああ。現れたぞ?

 アレスの魔道士数百人が、そん中から現れやがった。

 おかげで魚釣りが台無しだ。

 ウザいんで、全員、石に変えて湖の底に沈めておいた。

 何だ、心配してくれたのか? それは嬉しい」


 ヴァティールは、機嫌よさそうに笑って応えた。


「いや、ヴァティール殿は本当にお強い。感心致しましたぞ」


 アルフレッド王が言う。


「本当に素敵ですわぁ。ヴァティール様。

 これほどのことが出来るのは、きっとこの世で貴方様だけです。

 お仕え出来て光栄ですわ!!」


 アリシアも昔と違って、本心からそう思っているようだ。


「ヴァティール様さえいらっしゃったら、わが国は安泰です!

 どうぞいつまでも、いつまでも……わが国にいらして下さい!!」


 いつもは控えめなウルフも、手放しでヴァティールを褒める。





昨日、メッセージで誤字を教えて下さった方、大感謝です!!

いつもありがとうございます。

早速直しました☆


特に

>結婚しようと言っているだっ! ←「の」が抜けてた。


エルのセリフが方言になっていて吹きました。(吹いている場合ではない?)

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